「バリキャリ」が疲れ果てた結果

次に、「そのほうが楽」型の男尊女子。働く女性が当たり前になった今でも、多くの職場では昔ながらの「男性中心文化」が生き残っている。

「働く時間も働き方も、今まではすべて男性がルールを作ってきて、いわば『男性仕様』になっている。そこにあらゆる点で合わせていくのは、女性にとってはやはり大変です。無理をして男並みに頑張っても、体を壊したり、あまりモテなくなったり(笑)」

酒井順子●1966年、東京都生まれ。立教大学卒業。高校生時代からエッセイストとして活躍。広告会社勤務を経て、『負け犬の遠吠え』で講談社エッセイ賞、婦人公論文芸賞を受賞。『ユーミンの罪』、『子の無い人生』など著書多数。

それよりは1歩下がって、男を立てていたほうが楽に世渡りできると気づいてしまったケースといえる。バリバリ働いてきたベテランのキャリア女性が、疲れ果ててこの境地に至る例も少なくないとか。

そして最後が、男性側の「立ててほしい」願望をつい読んでしまう「男の願望を忖度」型。来客や会議のときに率先してお茶を入れてしまったり、年配の参加者が多い宴席でつい空気を読んでお酌をしたり。

「難しいのは、女性社員がお酌をしないことに驚くクライアントもいれば、お酌をすることで逆に『おたくの会社は民度が低いのか?』と感じるクライアントもいるだろうということです。そういうことを考えながら、都度相手を見て空気を読むことを、多くの女性は子供の頃から毎日ずっと続けてきているわけです」

若い世代でも、この構図は基本的に変わらない。むしろ先輩世代の働く女性が「仕事か結婚か」の二者択一を行ってきたのに対し、若い世代は「仕事も結婚も子供も」手に入れる可能性をあきらめていない。

「少子化が進むところまで進んだ反動として、女性たちの間では『子供がいるって実はいいことかも』という感覚が広がっています」と酒井さん。一方で若い男性の間では「草食化」が進行し、結婚願望は薄い。「『結婚して子供をつくってもいい』と考える男性は、今や希少なのです」。