この国のかたちをつくりあげた、有名無名な勇者たち73人の残した轍に、混乱の世を生きる現代人の道標を探す。あなたに似たリーダーは見つかるだろうか。

チェンジ――いつの時代もキーワードになる言葉である。大きなプロジェクトを成し遂げる力量と、それを存続させる手腕は別のものなのかもしれない。事を成し遂げたあとでは当然状況が変わる。人間もうまく変われるかどうか。ここにもリーダーの資質がありそうだ。

維新三傑の一人で、江戸の無血開城に携わった西郷隆盛は賊軍として生涯を終えた。部下を引っ張る純情さ、愚直さが、維新を成し遂げたあとでは邪魔になってしまったのだろう。大車輪の活躍で新会社をつくった最大の功労者が、石持て追われるケースに似ている。

西郷とは対照的に、こちらも三傑の一人、長州藩の桂小五郎は幕末を生き抜いて明治で高官になった。「逃げの小五郎」などの揶揄が付きまとうが、ただ臆病な凡輩が高官になれるわけもない。『桂小五郎』を読めば、そこには命懸けの遊泳術があったことがわかる。

「ぜんぶ竜馬一人がやったことさ」【坂本竜馬】
『竜馬がゆく』司馬遼太郎・著

「薩長連合、大政奉還、あらァ、ぜんぶ竜馬一人がやったことさ」と勝海舟に言わしめた不世出の人物。自分は何がやりたいのか、明確に打ち出してエネルギッシュに生きた竜馬。彼の周りで繰り広げられた激動の青春群像劇。

著者が惚れ込んだ大西郷の一生【西郷隆盛】
『西郷隆盛』海音寺潮五郎・著

著者が惚れに惚れ込んで描いた大西郷の一生。薩摩藩を愛した一途さ、維新の立役者でありながら賊軍として散った悲劇。

逸材を輩出させたリーダーメーカー【吉田松陰】
『吉田松陰』童門冬二・著

時代を超えた教育観を持つ熱血教師の、純な人間像。「他人を導くのはうまいが、なぜか自分の人生を全うできない人なんです」。

役目を果たした幕末の彗星【大村益次郎】
『花神』司馬遼太郎・著

田舎医者が上野彰義隊の総隊長になって活躍。

道を誤り、悲劇へ向かう天狗党【武田耕雲斎】
『魔群の通過』山田風太郎・著

天狗党の迷走を心ならずも率いたリーダーの苦悩。

「人斬り半次郎」の誇り【桐野利秋】
『九重の雲』東郷隆・著

西郷とともに戦い、義に殉じた生涯を描く。

維新三傑の一人。明治に高官に【桂小五郎】
『桂小五郎』古川薫・著

「逃げの小五郎」と揶揄される人物の見えざる底力。

若き英傑のシニカルな人生観【高杉晋作】
『高杉晋作』三好徹・著

20代にして藩政を任された光芒の生涯。

理想に燃えながら裏切られた男【相楽総三】
『草莽枯れ行く』北方謙三・著

偽官軍の汚名を着せられた赤報隊大将の遺恨。

竜馬に認められた財政再建の手腕【三岡八郎】
『軽躁の気味あり』東秀紀・著

後の子爵・由利公正。『鹿鳴館の肖像』所収。

(構成=須藤靖貴 撮影=宇佐見利明)