信じて任せた以上は目をつぶり、何も言わない

――社員の方の平均年齢は、どれくらいですか?

【出口】30代後半です。当社は年功序列ではなく、定年もありません。年齢が高くて貫録があっても、何も意思決定できなかったり、部下を公平に見れなかったりする上司より、年齢が若くてもきちんと決めるべきことを決めてくれる上司のほうが、みんなが働きやすいでしょう。ただ僕は、上司も部下も組織を運営するための「機能」に過ぎないと思っているんです。チームで仕事を回すために、上司はたまたま上司の機能を割り当てられただけ。会社の役職は、別に人間として偉いわけでもなんでもないんです。森君は取締役としての「機能を果たせる人」だと思ったので、任せようと思いました。

――ご自身で創業した会社を後任の方に気持ちよく「任せる」ために必要なことは何でしょうか。また、出口さんの今後について教えてください。

【出口】僕の本、『任せ方の教科書』(角川書店)にも書いたのですが、信じて任せた以上は目をつぶり、何も言わないことに尽きると思います。僕はもう取締役を辞めたので、会社の経営にはタッチしませんし、聞かれない限り何も言わないと決めています。子育てと同じですよね。ただ、会社のPRや若手の育成はやったほうがいいと思いますので、これからも会社のPRのために、声がかかる間はどこへでも行って話しをするつもりです。それがライフネット生命の宣伝になると思って講演会のスケジュールを入れています。今日も確認したらかなり先までたくさん入っていました(笑)。マウンドは若い世代に任せて、コーチやバッティングピッチャーのように後陣に回り、チームを支えていきたい。

社内では、若手社員を中心に「出口塾」を続けていきます。選んだ本を読んでもらって、1時間半とか2時間、みんなでディスカッションする。去年から始めているのですが、やはり保険業界で50年近く生きてきた僕しか知らないこともありますので、僕自身が先輩に教えてもらったことを若い社員に伝えていき、保険についての知見をバトンタッチしていきたい。「次の世代にバトンを渡す」ということは、そういうことなのかな、と。

――森さんと初めて会った時の印象を覚えていらっしゃいますか?

【出口】よく覚えていますよ。えらいしっかりした奴が来てくれて、頼もしいなと思いました。初めから高い能力を活かして、フル回転してもらったと、感謝しています。

どうせやるなら大きな仕事をしたい

――森さんにお伺いします。出口さんは、森さんを取締役に抜擢した決め手は「突破力」だとおっしゃっています。ご自分を分析していかがですか。

【森】「突破力」というと、ものすごく困難な状況を打開していくイメージですけど、どちらかというと私の強みは、やはりディールをまとめてくるところ。あとは社内で、そうした大切な意思決定の決裁を取るための判断材料を整えるところは、一応自分の得意とするところかなと思っています。たまたまそれを整えることが、結果として会社が直面していた課題、突破しなければならないアサインメントだったのではないかと。

ライフネットらしく業界を動かすような大きな仕事をしたい。同じ自分の時間を使うなら、インパクトのあることをやりたいという考えがありました。そういう意味では、大きく物事を考え、外部との交渉をすることは自分の職務ととらえ、これからもやっていかなければと思っています。