企業は、建設業、飲食業、通信業など、業種ごとに分類することができますが、大きな視点で見れば、次の5つのカテゴリーに集約できます。

●製造業……モノをつくる
●小売・サービス業……モノやサービスを顧客に届ける
●卸・中間業……製造と小売の間をつなぐ
●産業基盤分野……運送や金融、通信など、インフラ面でビジネスを支える
●専門分野……士業やコンサルタントなど、専門の知識や技術でサポートする

これまで、企業はこれら5つのカテゴリーのいずれかに属して事業活動を行ってきました。たとえば、小売業の会社がモノをつくることはなかったし、製造業の会社が消費者にモノを直接売ることもありませんでした。

しかし、いまや業種の間にあった壁がなくなりつつあります。小売業がものづくりに進出したり、逆に製造業が直販に乗り出したりするなど、カテゴリーの垣根を越えてビジネスを展開するケースが増えてきました。

業界の垣根が取り払われた

事例としてわかりやすいのは、国内に2万店舗、世界に6万店舗をもつコンビニエンスストアの雄、株式会社セブン-イレブン・ジャパンです。

セブン-イレブンは、従来のカテゴリーでは小売業に属します。メーカーがつくった商品を仕入れて店頭に並べて販売するというビジネスモデルでした。

しかし、いまや売り場では、メーカー名が入ったナショナルブランド(NB)よりも、セブン-イレブンの名前が入ったプライベートブランド(PB)が目につきます。つまり、製造業のカテゴリーにまで足を踏み入れているのです。

かつてはコンサルタントなどの専門家に頼っていた需要予測も自社で行っています。小売業界ではPOS(販売時点情報管理)システムを活用して品揃えを決めることが一般的になっていますが、その手法を確立したのもセブン-イレブンでした。

産業基盤に分類される分野にも進出しています。2001年に設立されたセブン銀行です。小売業者自身が銀行を設立してATMを全店舗に展開するのは前代未聞でしたが、いまでは有人店舗をもつまでに成長しています。

2007年に電子マネーの「nanaco」をスタートさせたことも見逃せません。産業基盤分野への進出であると同時に、専門分野の強化でもあります。POSシステムでは、個人の購買行動まではわかりませんでしたが、「nanaco」のデータを分析すれば、ニーズに即した精緻なマーケティングが可能です。

こうした変化が起きているのはコンビニ業界だけではありません。一企業が製造から販売まで一気通貫に行えば、産業分野としての卸・中間業は存在価値を失うのは明白です。

では、従来の業種の垣根が消えた結果、いったい何が起きているのでしょうか。