取りざたされる次期総裁の名は? 

仮に黒田が交代するとなった場合、総裁候補として有力なのは、コロンビア大学教授の伊藤隆敏だろう。黒田が財務省で財務官を務めた時代に、副財務官として支えたのが伊藤だ。伊藤は、経済学者としてリフレを表明しており、黒田がリフレ派になる上での理論的な支柱となった一人だ。

黒田の異次元金融緩和が、維持されるというメッセージを市場に与えるためには「伊藤総裁」は有力なカードとなるだろう。また安倍のブレインでリフレ派のスイス大使・本田悦朗が起用される可能性も取りざたされそうだ。 

副総裁については、リフレ派の経済学者から起用された岩田規久男は高齢なこともあり交代の可能性がささやかれている。後任には、同じくリフレ派の経済学者で早稲田大教授の若田部昌澄が浮上しそうだ。

日銀出身者の副総裁については、現在の中曾宏から、異次元金融緩和を理論、実務の両面で支えてきた理事の雨宮正佳に交代する可能性が出てくるだろう。

次の日銀総裁は、黒田が続投しても、別の人物が起用されても、異次元金融緩和からの出口という撤退戦を担うことになる。不確実性の高い世界経済の動向を踏まえ、経済への影響を慎重に見極める難しい作業が続くだろう。市場との粘り強い対話を続け、異次元金融緩和の出口を丁寧に演出する地道な政策運営が求められることになる。(文中敬称略)

小野展克(おの・のぶかつ)
名古屋外国語大学教授。1965年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部社会学専攻卒。89年共同通信社入社。日銀キャップ、経済部次長などを歴任。嘉悦大学教授を経て、2017年より名古屋外国語大学教授、世界共生学科長。博士(経営管理)(2016年)。著書に「黒田日銀 最後の賭け」(文春新書)、「JAL 虚構の再生」(講談社文庫)、「企業復活」(講談社)などがある。
(写真=ロイター/アフロ)
【関連記事】
日銀次期総裁「大本命」5人の名前と思想
日経平均株価「年末までは上昇基調続く」
森長官"異例の3年目"地銀が落ち込む理由
内閣改造の次は「消費減税」といえる根拠
森永卓郎推薦 "正しく"経済を知る10冊