黒田の交代はアベノミクス失敗との印象与える

では、首相の安倍が、四面楚歌の黒田を続投させる可能性が高いとみられている背景は、どこにあるのだろうか。 

まず、足元の円安傾向と2万円に達した日経平均株価(225種)、失業率の低下など日本経済をめぐる良好な環境を作る上で、黒田の異次元金融緩和が一定の効果を発揮したことが、大きいだろう。

リーマンショック後に、欧米が大規模な量的緩和に動く中で、黒田の前任総裁である白川方明の量的緩和は、明らかに迫力不足だった。このことが、急激な円高を呼び込み、株価の低迷を招いたとみる専門家は多い。

黒田がFRBを超える勢いの異次元金融緩和を導入したことで、円安ドル高が実現、グローバル企業の海外子会社が稼いだ利益を円換算した連結決算ベースの利益を拡大させ、株高を演出した。さらに団塊世代の大量退職などに加えて、株高による収益の拡大が企業の採用意欲を高めた点は見逃せないだろう。 

アベノミクスの第一の矢にあたる異次元金融緩和は、その政策の目標であるデフレ脱却は実現できていないものの、円安という回路を通じて、日本経済の好転に貢献していると言える。

そう考えると、安倍の「ポリティカルアセット」の形成に、黒田は大きく寄与している。安倍政権は、テロ等準備罪の強行採決や森友学園、加計学園問題をめぐる対応の不備で、一時は大きく支持率を下げた。そうした中で、解散総選挙に踏み切る力を安倍に与えたのは、北朝鮮の脅威や民進党の混乱に加えて、株高や雇用環境の改善によって国民の支持があると判断したからだと考えられる。

「ここで黒田さんが交代させれば、異次金融緩和を柱とするアベノミクスが失敗だったとの印象を与えかねない。黒田さんが強く固辞しないなら、続投の可能性が高いだろう」 

安倍に近い筋は、こう言う。批判が多くても黒田の金融政策が、支持率の低下に歯止めをかける一因になっているとみられるからだ。