日本でのガン死亡者数のトップは「肺ガン」。胃ガンが減少傾向にある一方で、肺ガンはひたすら死亡者数が増加している。治療が難しいからだ。

肺ガン治療の病期別5年生存率を見ると、いかに治療が難しいかがはっきりする。IA期80%、IB期65%、IA期55%、IB期50%、IIIA期30%、IIIB期15%、IV期5%となっており、I期でも生存率が五分五分の状態と、実に厳しい。

それでも超早期で発見されると90%程度の確率で治る。超早期ではまだ無症状のため、発見されるのはガン検診や、他の病気で胸部X線検査やCT検査を受けたときなどだ。その場合には、条件が2つついてくる。1つは、その肺ガンが太い気管支にできる「中心型肺ガン」であること。もう1つは、肺ガンの大きさが直径1センチ以下、深さが5ミリ以下であることだ。

以上の条件をクリアした超早期肺ガンの場合は「光線力学的治療(PDT)」が受けられる。光線力学的治療では、患者の静脈に光感受性物質を注射し、それがガン細胞により多く取り込まれた時点で、患者の肺に気管支鏡を入れる。診断用の低出力レーザーをあてるとガン細胞に取り込まれた光感受性物質が赤い蛍光を発するので、その部分の細胞をとって確定診断を行う。

ガンと診断がつくとレーザーを診断用から治療用に切り替え、ガン細胞に照射する。すると活性酸素が生じ、それによってガン細胞は壊死してしまう。このように光線力学的療法は悪玉と思われている活性酸素を有効利用した治療法である。

早期は早期でも中心型ではなく末梢型肺ガン(太い気管支より先にできるガン)では、胃ガンや胆のう摘出手術などで行われている「腹腔鏡下手術」の胸部版、「胸腔鏡下手術」が行われている。

胸腔鏡下手術は患者の脇の下に1.5センチ程度の孔(あな)を開け、その孔から胸腔鏡を入れる。ガン病巣を確認したら、さらに体の3カ所に孔を開けて、治療器具を入れる。光線力学的治療と開胸手術の中間的治療法である。

次の段階が開胸手術。基本は肺葉単位で切除する「肺葉切除」である。もちろん、リンパ節も切除する。肺は2つと思いこんでいる人が多いが、実は5葉に分かれている。右肺が上葉、中葉、下葉で、左肺が上葉と下葉である。

術後は、かつては抗ガン剤を使わずに様子を見るのが一般的だった。それがいまは抗ガン剤の効果が科学的に認められてきたために、術後化学療法に大きな変化が出てきた。肺ガン治療における大いなる武器として浮上してきたとあって、期待されている。

 

食生活のワンポイント

肺ガンは生存率が低いため、より予防が大事になる。タバコ、大気汚染が悪影響を与えるのはいうまでもなく、ストレスも影響してくる。

逆に、予防に効果のある栄養素も明らかになっている。「葉酸」と「ビタミンB12」で、予防効果に科学的根拠があることが、東京医科大学第1外科の加藤治文教授グループによって報告されている。つまり、食生活では葉酸とビタミンB12を十分に摂取すると肺ガン予防に結びつく可能性が高いということだ。

葉酸が多く含まれているのは、可食部100グラムあたりでみると、牛・鶏・豚レバー、生うに、青のり、大豆、モロヘイヤ、素干しさくらえび、ホウレン草、ブロッコリー、卵黄、かずのこ、サニーレタス、そら豆、トウモロコシなど。

ビタミンB12が多く含まれているのは、干しのり、田作り、しじみ、味付けのり、牛・鶏・豚レバー、あさり、青のり、はまぐり、かき、さんま、たらこなど。

また、葉酸はビタミンCを一緒に摂取すると、より効果が発揮される。参考にしてメニューを考えてみてほしい。