一方、職場では、お手本が目の前にあるわけですから先輩のいいところを見て、真似るというのが一番。先輩の行動を見て「こうすると相手の機嫌がよくなる」「こうしたら相手を怒らせた」とよく見ること。それがリアルなその職場でのマナーの学習だと思います。

勝負のときは全身フル装備で

苦手な人とどう付き合うか、ですか。営業時代、印象に残るこんな出来事がありました。長野に赴任したとき、「長野はネオンがないよ」と言われて寂しがったのですが、実は長野はシェアが高い重要営業地域でした。

ある代理店のAさんは、口説かないと自分の営業課の成績が伸びないというキーパーソン。毎週伺ってはAさんに挨拶をしていました。でも当社には見向きもしない。ほかの会社とばかり付き合って、そちらへ契約を回していたのです。うちを無視し続けるAさんは上司を含めて、みんな避けていました。毎回挨拶のときには、名刺を置いていたのですが、暮れの挨拶に行ったとき「また来年もよろしくお願いします」と頭を下げたら、何度も顔を合わせているのにもかかわらず「はて、どちら様でしたっけ?」と。ほかの保険会社の人もいる前で恥をかかされてしまいました。

この人を絶対に落としてやろうと思いましたね。スイッチが入ったというか、もう意地でした。その後も元気よく「こんにちは 同和火災の渡瀬です」とAさんに挨拶をし続けました。めげずに通っているうちに、Aさんから電話が入って「渡瀬さん、ちょっと夜どう?」。

嬉しかったですね。

わたせせいぞうさんに学ぶ「40代の心がけ」3カ条

1. 初対面で即「名前」を丸暗記
初めて会った人の印象をよくする第一歩。心遣いを見せることができる。

2. 勝負のときは全身フル装備で
頭からつま先まで準備すると、前向きに挑める。

3. 相手が何を求めているか常に慮る
よく観察して幸せな笑顔になるイメージを描く。

(構成=遠藤 成 撮影=岡田晃奈)
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