収益源を探る「KK法」の手順

では、このアフター・マーケットへのアプローチの方法を、広く産業や企業の事例から学ぶには、どうするか。KK法の手順は「列挙」→「拡張」→「分類」→「意味づけ」というものだ(図1参照)。

(1)まずは、アフター・マーケットを収益源とすることに成功しているのは、どのような企業、あるいは産業なのかを、思いつくままに列挙していく。

(2)続いて、前提条件は同じなのに、結果は異なる企業や産業(今回は、アフター・マーケットは大きいのに、アフター・マーケットを収益源にできていない企業や産業)を列挙していく。列挙事例の幅を、実験計画のような発想で拡張していくのである。

図2には、この(1)そして(2)の2つの手順から導き出した「アフター・マーケットが大きい産業」を示している。

(3)次は分類である。(1)(2)の手順で列挙した企業あるいは産業を2つ、あるいはそれ以上のグループに分けてみる。

(4)仕上げのステップは、意味づけである。(3)の分類による各グループ内の企業や産業に共通して見られる、経営やマーケティング上の特徴(共通項)を洗い出す。そして異なるグループの間でそうした違いが、なぜ生じるかを検討する。

当然ながら、どのような区分による分類であっても、グループ内の構成要素に共通の特徴や存在理由が、常に見いだされるわけではない。KK法では、意味づけが見いだせない場合には、(3)のステップに戻り、新たな区分による分類を試みる。あるいは、首尾よく意味づけが見いだせたとしても、さらなる意味づけを、別の切り口から行うことができないかも検討する。この循環を繰り返すなかで、KK法による企業事例分析は深まっていく。

列挙し、拡張し、分類する

図2には、コーヒーマシンを含めた、アフター・マーケットが大きい産業を列挙している。そして、それらを拡張しながら、分類を試み、3つのグループに分けている。

図2の3つのグループ各々の特徴を見ていこう。まず、(C)のグループを構成するのは、産業の主要企業がアフター・マーケットで存在感を示せていない産業である。これらの産業にとってのしょうゆ、コーヒーの豆や粉、そしてパソコンソフトは、大きなアフター・マーケットである。しかし、これらのアフター・マーケットの大部分は、容器や機器の主要製造企業とは異なる企業によって押さえられている。実はネスレ日本は、コーヒーマシン産業のなかでの例外的存在なのである。

(A)と(B)のグループの産業では共通して、アフター・マーケットが主要企業の大きな収益源となっている。一方で、(A)と(B)のグループには、違いもある。(A)の企業には、オープンな販売チャネルの採用が多く、(B)の企業には、クローズな販売チャネルが多い。

なお、クローズな販売チャネルとは、直営化や系列化などにより、企業が自社製品の流通網やサービス網への関与を強めたチャネルを指す。一方、オープンなチャネルとは、このようなチャネル・コントロールを志向せず、自社製品を自由かつ広く流通させるチャネルである。例えば、自動車はクローズ型販売チャネルを維持しており、家電製品はオープン型販売チャネルが中心である。