2017年7月、ANAホールディングスなどが約28億円の出資を決めたベンチャー企業がある。取り組む事業は「宇宙ゴミ」の回収だ。ほかに「宇宙ゴミ」の回収をビジネスとしている企業はどこにもない。どんなビジネスモデルなのか。ハーバード大学の授業でも取り上げられた発想法に、田原総一朗氏が迫る――。
アストロスケールの岡田光信CEO(左)と田原総一朗氏。

毛利衛にもらった人生を変えた一言

【田原】岡田さんが宇宙に興味を持ったきっかけは、高1で参加したNASAのスペースキャンプだったそうですね。どんなキャンプですか。

【岡田】定期購読していた科学雑誌の「ニュートン(Newton)」に、宇宙飛行士の疑似体験ができるプログラムへの募集記事が載っていて、すぐに応募しました。これがけっこう本格的で、本物の管制局でスペースシャトルが飛んでから下りるところまでのシミュレーションであったり、無重力をつくり出す機械装置に入って姿勢を保つ練習を経験しました。

【田原】宇宙飛行士の毛利衛さんと会ったとか。

【岡田】はい、直接お話しさせていただきました。そのときもらった「宇宙は君達の活躍するところ」という手書きのメッセージは私の宝物。宇宙は国がやるものと思い込んでいましたが、自分がやってもいいんだと、遠く小さい光が見えた気がしました。

【田原】岡田さんは中学生のころ落ちこぼれだったのに、そこから猛勉強したそうですね。NASAのエンジニアになろうと思ったんですか?

【岡田】NASAのエンジニアになろうとしたわけではないのですが、片手に分厚いファイルを持ち、もう片手にコーラを持って颯爽と歩く姿がカッコよくて、猛勉強すればああなれるのかなと。帰国後は、学校から帰って毎日10時間勉強するようになりました。当時は睡眠時間が1日4時間ほどだったと思います。

【田原】その結果、模試で全国1位になった。

【岡田】はい。高校3年生最初の模試でした。でも、それは受験勉強で一番になったというだけですから。