墓参りその他を10年サボると消滅

そしてこのような法的性質の違いは、消滅時効(権利を一定期間行使しなかったときに権利が消滅すること)の有無や期間にかかわってくる。

消滅時効は、所有権にはなし。つまり権利は永久に残る。

「所有権以外の物権」の消滅時効は20年、債権は10年だ。使用権は債権なので消滅時効は10年となるが、お墓の永代使用権は少し事情が複雑だ。

「永代使用権は、基本的には債権ですが、『物権的な性格を持つ土地使用権』であるとする判例があります。したがって権利を行使していなかった場合、霊園に対しては10年で使用権が消滅。第三者に対しては20年で排他的な主張をする権利が消滅すると考えるのが妥当でしょう。『永代』とはいっても、使用しなければ消える権利なのです」

では、墓地を「使用する」とはどのような行為を指すか。

墓地には、遺骨が埋葬されているが、人間は死ぬと権利能力を失うため、仮に契約した本人が埋葬されていても「使用している」ことにはならない。永代使用権を引き継いだ新たな使用者が墓参りしたり、管理料を納めることが墓地の使用であり、それをサボり続ければ墓地を使用していないと解釈される。

「実際は10年待たずに契約解除もありえます。管理料を支払わずに督促にも応じなければ、信頼関係が壊れたとして契約解除が認められる可能性もあります。5~6年滞納し続けたら黄色信号です」

(答えていただいた人=弁護士 小松初男 図版作成=大橋昭一)
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