中国「NEV法」とカリフォルニア州「ZEV法」

最大の理由は、中国で2018年、または2019年から実施される予定のNEV法(ニュー・エネルギー・ヴィークル規制法)への対策だ。これはEV、燃料電池車、またプラグインハイブリッド車を中国で普及させるため、中国政府が中国で自動車を販売する企業に対して強制力を示すものだ。自動車メーカーは中国政府からクリアしなければならない目標点数が設定される。EVでは、満充電での航続距離によって1台あたりの点数が決まっており、その合計点が目標点数に達しない場合、中国政府が自動車メーカーに対して多額のペナルティーを課す。

こうしたやり方は、アメリカのカリフォルニア州が1990年から実施しているZEV法(ゼロ・ミッション・ヴィークル規制法)と同じだ。そう書くと、中国がアメリカのやり方を模倣したのかと思われるかもしれないが、実態はまったく違う。中国政府はアメリカ政府との、中国版ZEV法の実施に向けた正式な協議を進めてきた。具体的には、中国側は政府系の自動車研究所である、中国汽車技術研究中心(通称CATRC)と、カリフォルニア州環境局と各種実験を行っているカリフォルニア大学デービス校で、EV研究に関する覚書を交わしている。

こうした経緯があり、中国のNEV法はカリフォルニア州ZEV法とかなり近い形式になる可能性が高い。トヨタを含め自動車メーカー各社が、世界第1位の自動車大国となった中国、そして中国に抜かれたとはいえ付加価値の高い高額商品の販売台数では中国と匹敵するアメリカ、これら2国の政府の動向に対して敏感に反応するのは当然である。

さらに、ここへきて奇妙な動きが欧州で出てきた。マクロン政権誕生から間もないフランスで2040年までにガソリンおよびディーゼル車の販売を禁止するとの政府方針が出た。その動きを追うように英国でも同様の発表があった。

この仏英の動きについては、政治的な思惑が極めて強いと、筆者は考える。なぜならば、7月にフランスで開催された次世代交通に関する欧州会議などを現地取材しているのだが、EC(欧州委員会)としてのEVや燃料電池車に関する中長期的なロードマップを作成する動きがないからだ。

ミニカー規定で量産されている、小型EVのトヨタ車体コムス(筆者撮影)

とはいえ、自動車産業はいま、自動運転化、コネクテッドカー化、電動化、そしてモビリティサービス化の4つの対流が入り乱れ、100年に1度の大変革に突入しており、仏英政府の思惑がきっかけに、”新たなる展開”が起こらないとも限らない。

EVの本格普及はいつになるのか? 現状で、それを正確に予測することは難しい。