(6)モヤモヤがなくなり、スッキリしたとき
溜飲(りゅういん)が下がる思いが致しました。

「『溜飲』 は江戸時代の医学用語で、胃の消化不良で胸焼けがする様子を指します。その『溜飲』が胃の方へ下がっていけば、不快感がスーッと消え、気分もスカッと晴れることから、わだかまっていたものが消え、憂鬱だった気分がクリアーになったときに使います」

(7)恥ずかしい失敗をしてしまったとき
先日の重大なミスにつきましては、汗顔の至り(かんがんのいたり)でございます。

「『汗顔』は恥じて顔に冷汗をかくことで、『まことにもって恥ずかしい』という意味。自らを恥じ入って、人に謝るときに使います。『若気の至り』は若さで許されるイエローカードですが、『汗顔の至り』は一発レッドカードのニュアンスに近いです」

(8)ごちそうしてもらったとき
本日は、ご散財をおかけしました。

「『散財』とは不必要なことに金銭をつかうこと、金銭を多く費やすことを意味する言葉。取引先などにごちそうになったときに、感謝の気持ちを伝える言葉として使いましょう。ただ、値段の安い店でごちそうになった場合に使うのはNG。それなりに高級そうなお店で使うのが鉄則です」

(9)久しぶりに知り合いを見かけたとき
卒爾(そつじ)ながら、以前、銀座でお会いしませんでしたか?

「『卒爾』とは軽率なこと、失礼な振る舞いを表す言葉で、“突然ですが”“失礼ながら”といった意味合いで使います。名刺交換程度しか交流のない知人を見かけたときは、この賢語を使って積極的に声を掛け、ビジネスチャンスを広げていきましょう」

TPOに合わせた言葉遣いが大切

「賢語」は誰かが手取り足とり教えてくれるものではない。効果的なのは、周囲にいる「仕事のできる人」や「感じの良い人」の会話やメールの内容をまねること。唐沢さんは「気になったフレーズは、英単語を覚えるように書き留めておくといい」という。

「ただし、知識をひけらかすような“上から目線”のコミュニケーションでは嫌がられます。相手との関係性や仕事内容など、TPOにあわせて自然と使い分けるのが理想的です。マニュアル的、機械的に使用すると逆効果になることもあるので注意しましょう」

唐沢 明(からさわ・あきら)
大学講師、コミュニケーションドクター、作家。1968年生まれ。東京書籍営業部、ベネッセコーポレーション編集部を経て、講師・作家として独立。日本大学、明治学院大学、津田塾大学、東北医科薬科大学就職講師。著書に『仕事でナメられないための賢語手帳』(亜紀書房)、『朝起きてから夜寝るまでふさわしい日本語』(トランスワールドジャパン)、『知っトク!敬語BOOK』(世界文化社)など多数。
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