水素からまた電気をつくって、EVに充電する

【安井】そうすると貯めた水素を電気にするのは、燃料電池ですか?

【清水】そう燃料電池も一つのオプションでしょうね。昔はRX-8のように水素ロータリーで、水素を燃やしたこともありました。とにかく水素は電気の入れ物なのです。

清水和夫氏(右)と安井孝之氏(左)

【安井】水素からまた電気をつくって、EVに充電するということですね。そうすると冬場もEVに充電する電気は元はといえば水力発電ですから、EVを走らせているのは再生可能エネルギーということになりますね。

【清水】ノルウェーのEV普及率が高いのはいろんな条件がそろっているからです。もちろん政府も政策的に手を打っていますよ。補助金も出していますが、一番効いたのは、EVにバスレーンを開放したこと。自然豊かな森、湖の近くで子育てがしたいので、家は郊外にあります。通勤のために都市につながる道は当然渋滞になります。EVだとバスレーンが走れる制度をつくったので、EVが一気に売れたようです。

石炭発電ではEVは「プリウス」よりもCO2を排出

【安井】ノルウェーのように自然エネルギーで電気がつくれる国はEVが普及すると環境にはとてもいいですが、多くの国はその条件が揃いませんね。

【清水】そうですね。中国みたいに石炭発電で電気をつくったら、Well to WheelでみるとプリウスよりCO2が出ます。だからテールパイプはCO2ゼロなんだけど、発電しているところからはやはり出てしまう。トータルでみたWell to Wheelの概念、つまり製造からリサイクル、廃棄まで考えるライフ・サイクル・アセスメントを考えながらEVの普及を議論しないとおかしなことになってしまう。

【安井】でも最近のEVへの期待感の強さをみていると、EVが環境問題やエネルギー問題の救世主のような受け止めになっていないでしょうか。下流のクルマという商品をみるだけでなくて、全体像を見て、どんなシステムが望ましいかを考える必要がありますね。

【清水】日本メーカーはなかなかビジョンみたいなことを言いません。欧米のメーカーがビジョンを打ち出して、みんながそこに流れていく傾向があります。EVでも同じような傾向があります。日本はコミュニケーションのうまさ、巧みさで欧米企業にやられていると思います。メディアの責任もありますよ。カリスマ的な経営者の「ビッグマウス」に影響されて、報道の流れがつくられていますからね。

(次回更新は9月16日の予定です)

清水 和夫(しみず・かずお)
モータージャーナリスト
1954年生まれ。武蔵工業大学電子通信工学科卒業。1972年に自動車ラリーにデビューして以来、プロレースドライバーとして、国内外の耐久レースに出場。同時にモータージャーナリストとして、自動車の運動理論・安全技術・環境技術などを中心に多方面のメディアで活躍している。日本自動車研究所客員研究員。
安井 孝之(やすい・たかゆき)
Gemba Lab代表、フリー記者、元朝日新聞編集委員
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒業、東京工業大学大学院修了。日経ビジネス記者を経て88年朝日新聞社に入社。東京経済部次長を経て、2005年編集委員。17年Gemba Lab株式会社を設立、フリー記者に。日本記者クラブ企画委員。著書に『これからの優良企業』(PHP研究所)などがある。
(写真=AFLO)
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