レストランや大浴場などの施設から訪問診療までが揃う

団塊世代などを対象にしたシニア向け分譲マンションの人気が高まっている。この秋から販売を開始した「マスターズマンションひまわり」(大阪府堺市)を例に、設備やサービス内容を紹介しよう。

同マンションは18階建てで、総戸数は130戸。段差のないバリアフリー仕様の住戸内には手すりの付いたトイレや浴室などがあり、車いすでも生活できる。具合が悪くなったときには居室内の緊急コールボタンを押すと、フロントから介護福祉士や看護師などの有資格者が24時間体制で駆けつけるサービスもある。館内にはレストランや大浴場などの共用施設のほか、テナントとして介護計画を作成する居宅介護支援事業所も入る予定だ。

年齢や身体状況に関係なく入居でき、将来、介護が必要になっても住み続けられるという。医療機関との連携も強みで、医師や歯科医師、鍼灸師らによる訪問診療ネットワークにより、希望に応じて住戸で訪問診療を受けることも可能だ(有料)。

同マンションを開発・運営するのは泉南生活協同組合(泉南市)。府内や和歌山県で在宅介護事業や介護付き有料老人ホームの運営実績があり、そのノウハウを生かして初の分譲マンションを開発した。竣工は2009年11月。価格は1860万~4480万円(1K~2LDK)。販売から数カ月だが、売れ行きは好調だという。

加齢に対応した設備やサービスが付いたシニア向け分譲マンションは関西圏を中心に開発が進んでいる。「50歳以上」といった年齢制限を設ける物件もあるが、制約のないものも多い。

長谷工総合研究所の調べでは、06年には全国で580戸供給されていたのが、10年には1200戸と倍増する見込みだ。数年前、あるデベロッパーがシニア向けに開発した物件が、販売から数カ月で完売したのをきっかけにブームに火が付いた。不動産不況でファミリー向けマンションの売れ行きが伸び悩むなか、シニア向けは有望な市場だと見られているようだ。

人気の背景には、郊外にある自宅から、買い物や生活に便利な都市部のマンションへ住み替えたいというシニア層の需要増もある。戸建ての管理や炊事の負担から解放され、鍵一本で外出できるマンションは防犯上も安心感が大きい。また、「子どもの世話になりたくない」と考える人も増えており、管理人らによる緊急時対応などのサービスは健康面や一人暮らしの不安を解消してくれる材料となっている。