地球環境問題は現代社会の主要な課題だが、全体を把握するのは容易ではない。さまざまな現象が複雑に絡み合うため、何が基礎事項なのか見当がつかないことも多い。本書は地球を太陽系の一惑星という視点で捉え、その全体像を「地球惑星科学」という新しい枠組みで説明した本である。

既存の専門分野にとらわれず地球全体を一つのシステムとして見る本書は、5つの章で構成される。第1章「太陽系のなかの地球」では、エネルギー逸散や物質循環など地球を理解するための基本概念を提示する。たとえば、大気中の「二酸化炭素は雨に溶け込んで地表に降り、大地を風化・侵食する。その結果、海の中に大陸の物質が大量に流れ込み、海の元素組成に影響する」(14ページ)。長い時間には大気と海は平衡状態にあり、いずれも大陸との物質循環に組み込まれているのだ。

第2章「地球の構成」では、惑星としての地球の勢力圏について語る。地球は固体圏である地殻・マントル・核の上に、流体圏としての海洋と大気がある。その上部には磁気圏が広がっており、地球上の生物を守っている。これら三者が果たしている役割を解説する。

第3章「分化」では、地球を構成する物質が多様化した原因を追求する。分化とは地球が46億年の歳月をかけて非常に多くの物質へ分かれた現象をいう。この分化過程では月も登場する。

「月は地球に火星サイズの原始惑星が衝突してできたと考えられている」(115ページ)のだ。地球上の物質だけでなく宇宙からやってくる隕石も、分化を知るため重要な研究材料なのである。

第4章「生命の起源と進化」では、地球環境が生命誕生にどのように関わったかが書かれる。

「地球上で生命が誕生するとき、突然誕生するわけではない。簡単な物質から複雑な物質を合成しながら、複雑な構造と機能をもった分子システムをつくりながら生命に至った」(171ページ)。原始生命の誕生後、生物は進化を開始するのである。最後の第5章「太陽系の起源」では地球型惑星の進化について述べ、惑星をモデルとして理解する考え方が語られる。

本書の豊富な図版は理解を助けてくれ、中に挿入された数式は読み飛ばしても一向に差し支えない。各章の末尾には要旨が簡潔に記されており、ここから読み進めるのもいいだろう。また、巻末に掲げられた索引も充実している。

自然科学の主流は、かつてデカルトが提唱したような現象をミクロに分析する研究から、全体をマクロに把握する研究へと移りつつある。巨大地震の発生、活火山の噴火、温室効果ガスによる地球温暖化など、ミクロに見たのでは解明できない現象は枚挙に暇がない。地球惑星科学には現象をマクロに解析するさまざまな手法がある。本書から、世の中に氾濫する複雑化した現象を解読する視点と具体的な方法論も学んでいただきたい。