費用対効果は圧倒的に高い

問題は、ここに挙げられた手法で本当に世の中を動かせるのかという点だ。ネットを活用した世論操作については実例がいくつもある。例えばISIL(イスラム国)。彼らはボット(特定の時間に自動的にツイートするプログラム)を多数つくり、ハッシュタグなども活用して無数のリツイートを呼び込むことに成功した。これによって自分たちの主張を世界中に拡散させ、人々を感化していったのだ。

さらにこうした仕掛けは、単体で実行するよりも、“合わせ技”によって大きな効果を発揮する。

例えば、まずボットなどを使って同じ情報をいくつも流して、インフルエンサー(世論に大きな影響を与える人)のリツイートやコメントを促す。その1時間後にYouTubeのトップに広めたい情報を数分間表示すれば、SNSを通して連鎖反応が起こるはずだ。

もし私の手元に100万円あったら、まず50万円を払ってユーチューバーなどのインフルエンサーに情報の拡散を頼む。残りの50万円で複数名にネット記事を書いてもらい、さらにボットを用いてリツイートを重ねるだろう。

SNSでの情報発信は、波に乗ってしまえばあとは勝手に広がっていくから、テレビCMに比べてはるかに安価だ。大規模な世論誘導はネットだけでは不十分だが、SNSで急激に広がった情報はしばしばテレビで取り上げられる。

そうすると“ネット世論”から世論へとステージが上がる。フェイクニュースではないが、昨年話題になった「保育園落ちた日本死ね」も、ネットの盛り上がりがテレビで扱われ、一気に世論として広がった例だ。