今回は、同じ福岡都市圏出身のコンビに、博多っ子のマサルを加えたところがミソ。PR効果を増強する戦略が、福岡市の観光振興策とマッチし、市などによる企画にマサルも参画することになった。福岡吉本の芸人について市担当職員は「福岡の魅力を発信する貴重な人材。心強い」と期待する。

(上)貸しホールを拠点に地道な活動を続ける福岡吉本の若手芸人たち。お笑いファンらで埋まる客席との距離は驚くほど近い=福岡市・天神のビブレホール(下)福岡吉本の若手芸人たちのステージを至近距離で楽しむ女性ファンたち。SNSをフル活用してイベント情報を集め、ファンの輪も広げているという

「福岡と聞いて中洲のネオン街を思い浮かべる人が多いと思うけど、おいしい店や観光名所など昼間も見どころは満載。魅力が24時間光る福岡を発信したい」と意気込むマサル。

船上での芸は続く。「エイショウエ」「ションガネ」の掛け声でのどを披露したのは「博多祝い唄(祝いめでた)」。江戸時代に歌われた「伊勢音頭」を起源とする説もあり、博多では葬儀の場で歌われるケースもあるという特別な唄だ。幼い頃から博多祇園山笠に参加しているという生粋の博多っ子らしく、神妙な表情で歌い上げた。

かと思うと、次は中洲川端にある行きつけのラーメン店の店主の物まね。ドラムを叩くような動きと表情で、茹で上がった麺を湯切りする。「それって、いったい誰よ?」と突っ込みたくなりつつ、なぜか笑ってしまう。

 

複数の劇場が活動拠点

現在、福岡吉本には37組57人が所属している。ベテラン組で言うと寿一実(60)、コンバット満(47)、高田課長(48)、ケン坊田中(45)。ほかに名を連ねてみると、「どんぴしゃ」=森本ちゃん(45)、あかみねとんぼ(40)/「レモンティー」=ヤマドゥ(39)、阿部哲陽(43)/「メガモッツ」=中川どっぺる(36)、池内祐介(36)/「スリーナイン」=金田昇大(33)、藤敏孝(33)/「メタルラック」=ノッポノナカ(29)、美意識タカシ(29)……といった面々がテレビやラジオ、CM出演のほか、吉本新喜劇などの舞台、観光大使などと幅広く活動している。

では、福岡吉本はどんな歴史を刻んできたのか。

発足は1989年。翌年のオーディションで博多華丸・大吉、コンバット満、ター坊ケン坊(カンニング竹山とケン坊田中)らが1期生としてデビューした。「M-1グランプリ 2009」で優勝したパンクブーブー(佐藤哲夫と黒瀬純)や、「THE MANZAI 2014」で優勝した華丸・大吉は東京に拠点を移したが、福岡吉本とは今も交流があるという。