農作物を効率的に都市へ運ぶ

西田のモットーは「顧客第一」。こんなエピソードを紹介しよう。

定温輸送パッケージ商品「Cargo(カーゴ)」。

介護向けの冷凍食品を製造するメーカーから「サーモボックスがほしい」という問い合わせがあった。西田が話を聞きに行くと、実は大手運送会社から値上げの要請があり、年間で数千万円のコスト増になるので、輸送会社の冷凍車を使わずに、サーモボックスを使って常温車で運びたいとのことだった。

配送の方法などを細かく聞くと、そのやり方は効率的とはいえなかった。西田は「それならば、当社で冷凍車を手当てして運びましょう」と、オペレーションまで引き受けることになった。西田は「日本の物流をよくするには、ボックスなど資材だけの対応では解決しないので、運送そのものも手がける必要があります」という。

ワコンは今年6月、大黒天物産と共同出資で運送のオペレーションを行うアリ・ロジという会社を立ち上げた。大黒天物産は西日本地域を中心にディオ、ラ・ムーなどの大型ディスカウントストアを128店展開しており、独自の配送ネットワークと定温車両を保有している。西田はそうした設備を利用することで、野菜や肉など生鮮食品の物流システムを確立させることを狙っている。

「農作物の流通では農家ではなく、卸売市場が主導権を握っているため、農家が値決めもできない。商流と物流がくっついているから、こんなおかしなことが起きるのです。それを断ち切り、農家が農作物の値を決めて、出荷し、われわれがそれを効率的に消費地に運べばいい。日本の農業を救うとか大それたことを考えているわけではなく、われわれができることであって、社会的にやるべきことなら、やるという一種の使命感で動いています。それが仕事というものだと思うのです」

大黒天物産では、すでに生鮮食品の効率的な定温輸送を実現しており、そのネットワークに乗せて産地から直接、農作物を集め、消費地の中に作る中継拠点に運ぶ。一種の共同配送である。中継拠点には冷凍冷蔵庫を設置、保管して、そこから外食やレストランの飲食店に収める。

「まずは、東京の新橋と大阪の梅田に拠点を作り、さらに各都市の繁華街の中に設置したい。われわれは運び屋に特化し、注文に応じて効率的、スピーディーに配送すれば、発泡スチロールの箱を店先に放置するような運び方をしなくてすみます」