モヤモヤを見える化すればお互いにスッキリ

また共通理解を深めるためには、言葉のやりとりだけでなく、互いに目に見えるように書いて“視覚化”するのもおすすめです。

部下にモヤモヤとしたものがありそうなら、「こういうことが困っていることだよね」と紙やホワイトボードに書き出したり、付せんをはったり、書いて持ってこさせたりする方法があります。頭の中を整理して、共有フォルダ化するのです。部下も外に書き出すことで自分のモヤモヤを整理することができますし、それを目で見ることで整理されます。

注意してほしいのは、それは記号として言語があるだけのいわゆる“言語コード”です。それをきっかけに、さらに会話をして理解を深めていかなければいけないということ。

たとえば、部下が書き出した中に「相手がなかなか返事をくれなくて困っている」とあったら、「電話しても、なかなかつながらないということ?」「メールに返信が来ないということ?」「『考えます』と言われたまま音信不通ということ?」と、こちらから言葉で補足していく。字で「見える化」して終わりではなく、またそれをきっかけに質問を始めることが大切なのです。

コミュニケーションの根本は「お互いは別の人間だ」ということ。この当たり前のことを忘れがちです。相手は異なる価値観をもった異文化の人だと思い、私プレゼンのスキルを使いながら、よりよい関係を築いていきましょう。

矢野 香
信頼を勝ち取る「正統派スピーチ」指導の第一人者。NHKキャスター歴17年。大学院で心理学の見地から「話をする人の印象形成」を研究し、修士号を取得。国立大学の教員として研究を続けながら、政治家、経営者、上級管理職などに「信頼を勝ち取るスキル」を伝授。

構成=池田純子 イラスト=米山夏子