自制心が、高学歴や高収入を発生させる

高学歴と高収入の関係を考える場合に、高学歴(A)、高年収(B)、そのほかの何か(C)とすると、考えられる関係としては以下の3つあります。

<1>A(高学歴)がB(高収入)を発生させる
<2>B(高収入)がA(高学歴)を発生させる
または
<3>C(そのほかの何か)がA(高学歴)とB(高収入)を発生させる

自制心と「高学歴・高収入」に相関はあるが、高収入と高学歴は擬似相関

A(高学歴)とB(高収入)はいかにも相関関係があるように感じられます。しかし、実際は擬似相関です。一般的に考えて、いい大学を卒業すれば年収が高くなるとは限りません。また、いい大学を出ていなくても年収が高い人はいます。学歴と年収が完全な原因と結果の関係にあるわけではないのです。

AとBともに影響を与えているのは、実はC(そのほかの何か)なのです。

では、Cとは何か。これこそが、自制心です。自制心が、高学歴や高収入を発生させるのです。その考えを支えているのが有名な「マシュマロ・テスト」の結果です。

「マシュマロ・テスト」はスタンフォード大学の心理学者ウォルター・ミシェルが50年間(のべ600人参加)にわたって実施した大規模な実験です(詳しくは『マシュマロ・テスト 成功する子・しない子』(早川書房)を参照ください)。同大学のビング保育園(心理学部の教育研究機関)の4歳の園児たちに、「マシュマロ1個を今すぐもらう」か「最長20分待ってマシュマロを2個もらう」のどちらかを選択させました。

▼「マシュマロ2個」を選んだ子は大成する

ウォルター・ミシェルは、この「マシュマロ・テスト」で欲求充足を長く先延ばしにできた(「待ってマシュマロ2個」を選んだ)子どもの成人期について、こう述べています。

「長期的目標の追求と達成が得意で、危険な薬物はあまり使わず、すでに高い教育水準に達し、肥満指数が大幅に低かった」

つまり自制心こそが、その後の人生の「成功」の礎となるものなのです。経済的な富を呼び込み、健やかな人生(とそれに伴う長寿)をもたらすのです。先ほどお話した、収入と喫煙率に関しても、自制心がその両方(「収入の高さ」、「喫煙率の低さ」とそれに伴う「寿命の長さ」)に関係していると僕は考えています。