私が『週刊現代』編集長時代、苦し紛れにひねり出した「ヘア・ヌード」という言葉は、一時大きなブームになった。

朝日新聞が批判した「ヘア・ヌード」

それまでは一般週刊誌にヘアが映り込んでいるグラビアが載ることなど考えられなかった。『チャタレイ夫人の恋人』『四畳半襖の下張り』裁判など、猥褻表現の自由を争う裁判は多くあり、有識者たちが論陣を張ったが、権力の壁にことごとく阻まれてきた。

だが、時代が少し動きだし、「ヘア・ヌード」が後押しして、大げさにいえば、日本の歴史上はじめて猥褻表現の自由が一歩も二歩も前進したのである。

これに対し、世の良識を代表していると錯覚している朝日新聞が、子どもも目にする週刊誌にヘア・ヌードを掲載するのはいかがなものかと批判してきた。JALやANAをはじめとする航空会社も、機内誌から現代とポストを外すという動きに出た。

私は、せっかくここまで進んだ性表現の自由を後戻りさせてはいけない、と朝日新聞に反論した。桜田門(警視庁)の担当者とも話して、これ以上過激なことをやる考えは、私にはないといった。

そのためか、いまもヘア・ヌードは健在である。だが、当局のさじ加減一つで、いつまた四半世紀前に逆戻りするかもしれない状況は変わってはいない。

私は「人間の欲の中で衰えないものは、食欲と性欲だ」と編集長時代によくいっていた。だがその頃の対象読者層は30代から40代である。

だが自分が70代になって、まだかすかだが性に対する欲望がくすぶっているのを感じる。いざ鎌倉というときのためにバイアグラを財布に忍ばせてある。使うことはなさそうだが。

両誌の苦心のタイトル

話を死ぬまでセックスに戻そう。こうしたセックス記事で難しいのは、いい方は悪いが、やることは一緒なので、バリエーションの付け方や目新しい見せ方について、死ぬほど考えることである。

両誌の苦心のタイトルをいくつか紹介しよう。

「冬が来た!『不倫』は罪だがナニは立つ」
「飛び出して震える四次元エロ動画」(ポスト)
「革命的エロ動画サイトを発見!」
「60歳からのSEXは『早くて強く』が気持ちイイ」(現代)

きっと担当者は血の小便を流しながら考えているに違いない。