これまでは要らなくなった衣類を古着店に持っていっても、二束三文でしか買い取ってもらえなかった。10万円で買ったブランド品だって買い取り価格は1000円がいいところだ。しかしメルカリでは自分で売値を設定できる。もちろん、売れなければ値を下げるしかないのだが、それでも元値の3分の1ぐらいで売れるという。3万円で買った服が1万円で売れるわけだ。メルカリを利用すれば高く売れるということでありとあらゆる品物が出品されて、その数は1日約100万件。そのうち約半数は24時間以内に捌けるというから驚きだ。

もはや服を買う必要すらなくなった

メルカリで服を買う人はゾゾタウンでは買わないし、ましてやアパレルのリアル店舗にも行かないだろう。ゾゾタウンやリアル店舗で3カ月前に「新着」で売っていた商品がメルカリに出品されるかもしれないからだ。それも3分の1の値段で。昔の人が神田の古書店をあさるような感覚で、今時の若者はメルカリをあさり、要らなくなったモノを出品する。不要品を二束三文で買い叩いてきた既存の古着店はじめリユース業者は、もはや商売上がったりである。

インターネットで洋服が借りられるファッションレンタルサービス、エアークローゼット。(写真=時事通信フォト)

アイドル(空いているもの)の活用という意味では、寺田倉庫が出資・参画しているオンラインのファッションレンタル事業、「airCloset(エアークローゼット)」も先進的だ。

倉庫業のしゃれた事業と言えばセキュリティと湿温度管理の行き届いた倉庫に美術品やワインなどを預かる管理事業がよく知られているが、実はアパレルの商品を預かるケースも多い。寺田倉庫は預かった絵画や美術品を貸し出す運用事業に乗り出していて、そのアパレル版が「エアークローゼット」だ。

会員になると月額6800円(ライトプラン)でプロのスタイリストが選んだ服が月に3着1セットで届く。返却期限はなく、気に入らなかったらすぐに送り返してもいいし、気に入った服は買い取りもできる。返送料は無料だし、クリーニングの必要もない。すべて込み込みの月額だ。感想をフィードバックすれば、さらに似合う(であろう)服を見繕ってくれる。

おしゃれが苦手な女性や服選びに迷う女性、仕事や子育てで服を買いに行く時間が限られている女性にとっては福音のようなサービスだろう。実際大繁盛で、15年のサービス開始で会員数は10万人を突破、参画ブランドは300以上もあるという。

メルカリのビジネスモデルはC to C(消費者間取引)ではなく企業(Business)を間に挟んだ「C to B to C」、エアークローゼットは「B to B to C」である。こうした新しいビジネスモデルが生まれて、ファッションの世界では日本は世界よりも一歩先に進んでしまったのだ。

すでにメルカリはヨーロッパ開拓にも乗り出している。彼らのような新しいプレーヤーが国内アパレルの変革をリードしていくことになると従来の百貨店やブランドショップの起死回生はそう簡単ではないことがわかるだろう。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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