宣伝は「事前に受け取った印象」がすべて

もちろん、予告編で幅広い客層の興味を引いたからといって映画がヒットするとは限りません。限りませんが、ほとんどの観客は映画を「事前に受け取った印象」で観に行くかどうかを判断します。

もし、(最大公約数的な意味で)時代の機運というものが――大ヒットシリーズ「パイレーツ・オブ・カリビアン」のように――「ポジティブでアッパーで、パーティー感に満ちたコンテンツ」を求めているなら、事前にその印象を予告編なり、プロモーションなりで観客に植え付けておくのは得策でしょう。作品の本質とは関係なく、単なる集客上の工夫として。

融通のきかない「正直」よりも、配慮に満ちた「印象操作」のほうが、ビジネス上好ましい結果をもたらすことだってあるのです。誤解する政治家が多いようですが、「印象操作」は必ずしも悪意を伴うものではありません。政治と同じく、「中身」だけでは勝負が決まらないのが、映画興行の妙にして奥深さではないでしょうか。

稲田豊史(いなだ・とよし)
編集者/ライター。1974年、愛知県生まれ。キネマ旬報社でDVD業界誌編集長、書籍編集者を経て2013年よりフリーランス。著書に『ドラがたり のび太系男子と藤子・F・不二雄の時代』(PLANETS)、『セーラームーン世代の社会論』(すばる舎リンケージ)。編著に『ヤンキーマンガガイドブック』(DU BOOKS)、編集担当書籍に『押井言論 2012-2015』(押井守・著、サイゾー)など。