では、社員個人が優秀な人材であり続けるためにはどうしたら良いか。

それは、社員個人が常に時代環境の変化、その先頭に立って自らのキャリアにかかる「危機意識を醸成」し、労働市場における自らの「市場価値を把握」し、知識やスキルを積極的に更新することで「付加価値の向上」を図り、そして自分のキャリアを自分で経営する感覚を養っていくことだ。すなわち「経営感覚の醸成」である。

そして、企業はそんな社員の努力を支援したいのだ。その一環としての、「副業奨励」なのである。

だが、大企業で働くサラリーマンの多くは、まだまだ副業のチャンスをメリットとして活かす備えができていない。

副業をチャンスとして捉える人材、思考停止する人材

ここで、副業奨励が企業にもたらすメリットを整理してみよう。大きくは3つある。

1つは停滞した組織や組織にぶら下がっている滞留人材の危機感を醸成することによる「組織と個人の活性化」。

2つめは、成果主義を徹底し、社員に任せている仕事や役割と本人の実年齢・勤続年数、家庭生活、そして雇用を切り離すことによる「カネとポストの抑制」。

3つめは、外でも活躍することのできる人材を見極めることによる「タレント人材の発掘」である。

したがって、経営環境や社会環境の変化を受けた企業側の対応に合わせ、本来であればサラリーマンは積極的に働き方を変えていく必要がある。そうでないと、ポストも与えられず、いつの間にか働く時間を減らされて給料も減らされて……ということになりかねない。

しかしながら、実際には、変化についていけないサラリーマンも多いのが実情だ(詳細は、拙著『すごい上司』(ぱる出版)をご参照いただきたい)。副業推奨と言われても、自分のキャリアで副業など考えたこともない、どうしよう、と困惑してしまう。

副業奨励に思考停止してしまう人材の特徴には、以下の様なものがある。

▼副業奨励に思考停止するサラリーマンの傾向

□唯一の収入は会社から受け取る給料である。
□転職エージェントとつき合ったことがない。
□副業のためにすぐ使えそうなスキルがない。
□会社に対する忠誠心は強いと自負している。
□会社の仕事が忙しすぎて他に手が回らない。

一方、副業奨励をチャンスとしてとらえるサラリーマンには以下のような特徴がある。

▼副業奨励をチャンスとしてとらえるサラリーマンの傾向

□いつでもどこでも、誰とでもすぐに仕事を始めることができる。
□特定の組織を離れても、使える人脈をもっている。
□スキルに市場性、汎用性があり、常に更新している。
□複数の収入源をもっている、自分の会社をもっている。
□自分と会社、仕事をつなぐエージェントとは友人としてつき合っている。