安倍改憲カレンダー三つのシナリオ

首相想定の「安倍改憲カレンダー」は事実上、撤回となったと見るのが自然だが、「方針転換」は本気かどうか。この局面で今後の展開を考えた場合、安倍首相は三つのシナリオが浮かぶのではないか。

第1のシナリオは、首相の言葉どおり「改憲挑戦放棄」の道だ。改憲を断念し、政権延命を最優先に考える。経済最優先路線に戻って政権の立て直しを図り、来年9月の自民党総裁3選を果たすという選択肢もあり得る。第2と第3のシナリオは、ともに改憲を断念せず、挑戦し続けるプランで、第2は従来から想定どおりの短期決戦、第3は「急がば回れ」で長期戦略に切り替えるやり方である。

第1のシナリオについては、実際は今も安倍首相は改憲をあきらめているとは思えず、「方針転換」「前言撤回」は見せかけ、あるいは一時逃れの弥縫策では、という疑いがある。むしろ改憲断念を決意すれば、安倍首相は目標喪失で政権意欲をなくし、一気に辞任に傾斜するのではないか。

『安倍晋三の憲法戦争』塩田 潮(著)・プレジデント社刊

第2のシナリオは、早期に支持率回復を実現し、改憲路線に回帰して、改憲問題について、予定どおり「安倍カレンダー」に沿って来年暮れまでに決着させるという中央突破作戦である。ただし、首相が「改憲カレンダー」にこだわって暴走した場合、改憲案の協議不調、発議否決、あるいは国民投票敗北などで、改憲失敗に終わる可能性は大きい。

第3のシナリオは、来年暮れまでの改憲問題の決着に拘泥せず、先に総選挙を行って国民の審判を受けた後、改憲の発議、国民投票に挑むという長期プランである。

だが、総選挙で改憲勢力が3分の2を割り込めば、改憲は不可となる。安倍首相はそれが心配かもしれないが、改憲を争点にした総選挙で敗退するなら、仮に「発議・国民投票」に持ち込むことができても、勝ち目はないはずだ。そのときは「民意は改憲ノー」と真摯に受け止めるしかない。

安倍首相は支持率急落に見舞われたが、政権意欲を失わず、内閣改造で出直しを図った。一方で、「憲法よりも経済」という姿勢を示したが、「改憲断念」を明確にしたわけではない。「好機再来なら改憲挑戦」という構えを崩していないと見るべきだろう。むしろ今年末までの「改憲解散」による総選挙の可能性も含め、今から来年前半までが「改憲政戦」の最終局面と首相は認識しているのではないか。憲法戦争はこれからが本番である。

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