移住促進のための「1万人復活特命係」

池原さんが指摘するように、松川村では家に閉じこもっている高齢者は少ない。村内には公民館を中心に約140のサークルが活動し、家族以外との交流が多い。神奈川県から松川村に夫婦で移住し、健康体操やヨガ教室などを開催する水口あい子さん(76歳)は村の高齢者の元気ぶりをこう話す。

(上)「健康体操」を指導する水口あい子さんは、他にヨガ教室などでも教える。18年前に夫の政夫さんと神奈川県から移住。(下)7年前に夫婦で移住した井口正治さん。村で人気の「いぐパン」を経営。パンを選びカフェで食べることもできる。

「ヨガ教室には90歳の方もいます。健康体操は80代の人も多く、お年をとられていても体は柔らかいですし、動きももたもたしていません。元気に年を重ねるのはいいことだなと思いますね。『男性日本一を支えているのは母ちゃんたちだよね。ますます父ちゃんを元気にするために、私たちも元気でいなくちゃ』と、笑いながら話してます」

夫の政夫さん(78歳)は笑みをうかべ、「村の人たちはとても馴染みやすく、家内はそんなみなさんから助けられて楽しく活動ができてるんです」と話す。

男性長寿日本一の松川村の悩みは出生者数が死亡者数を下回り、自然減により村の人口が9897人(17年7月1日)と、1万人を割ったことだ。移住促進対策として今年4月から「1万人復活特命係」を設け、条件付きだが、移住世帯に最大100万円、新婚世帯へは最大24万円の支援を始めた。

夫婦で東京から移住して村内でただ一軒のパン店を経営する「いぐパン」の井口正治さん(43歳)は、「移住者を優しく受け入れてくれる居心地のいい村です。年配のお客さんが増えてきたたことが嬉しいですね。思ったより雪は少なく自然が豊かで、田んぼ沿いのサイクリングや写真を撮るのが楽しみです」と話す。

「リタイアして村に来てくださる方も大歓迎。16年度の移住者は42人です。今は松川村にひとり住まいの人が、将来は親をここに呼びたいという相談もあります。若者から高齢者まで、いろいろな教室、サークルがあって、溶け込んでもらえればすぐ村に馴染んでもらえると思います」(松川村1万人復活特命係・畠山正英係長)

(撮影=小川 聡)
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