「静かに耐えて待つ」と前向きな気持ちになれる

こうした人生をたどってきた先生のストレス対処法を、ひとことで言えば、「静かに耐えて待つ」です。

先生の著書『いのちの絆―ストレスに負けない日野原流生き方』(ダイヤモンド社)で次のように表現されています。
 

『いのちの絆―ストレスに負けない日野原流生き方』(ダイヤモンド社)

≪耐えて待つ、ということは容易なことではありません。そんなとき、私は笹の葉を連想します。冬、雪が積もると、笹の葉は雪の重みでだんだんと撓(たわ)んできます。その状態で、笹の葉はじっと春を待ちますが、そのうちに暖かい陽射しが照るようになると雪が解け、葉は自然に元の状態に戻ります。

笹のように、人の心も時間が経てば、自然と戻るものです。ストレスを抱えたときには笹の葉を思うと、<笹のように、時間が経てば私も元に戻れる>と前向きな気持ちになれるわけです≫
(『いのちの絆―ストレスに負けない日野原流生き方』より)

「過ぎ去らない嵐はない、明けない夜はない」

という言葉があります。まさにその通りで、苦しい出来事もその最中は地獄のようにつらいと思っていても、いつか過ぎていきます。

マイナス思考がつらいことをさらにつらくする

マイナス思考にとらわれる人は、つらいことがあるとそれが永遠に続くかのように考えてストレスを膨らませてしまう傾向があります。永遠に続くと考えればストレスは2倍、3倍に膨れ上がります。あくまで一時的なものだとわかるだけでストレスは軽くなります。

少し俯瞰して物事を見れば、人生に起きることは自然界に似ていることに気づきます。晴れる日もあれば、嵐の日もある。寒い冬もあれば、温かい春も来る。すべては移ろいゆくもので永遠に続くものはないのです。

また、人の感情も一時的なもので絶え間なく変化するのです。どんなにつらいことも、いずれ過ぎ去ります。一時的なものだと考え、「静かに耐えて待つ」。

これはとても潔い考え方で、実践的な知恵です。私もつらいことが起きると何も手が打てない状況では、「冬の笹の葉のように静かに耐えて待つ」を何度も心に投げかけています。