乳がんは大都市圏と東日本で死亡率が高い

ちなみに、国立がん研究センターでは、都道府県ごとのがんの罹患率や死亡率などをまとめている。地域によってどのがんになるか差があるというわけだ。たとえば、女性でも罹患率・死亡率が高い胃がんは、東北地方の日本海側で死亡率が高い。これは、地域の塩分摂取量と関係していることが検証されており、胃がんの原因ともいわれるピロリ菌は、胃の塩分濃度が高いと生き延びやすいという。

そして、乳がんはといえば、大都市圏および東日本で死亡率が高い(図表2参照)。

一般的に、出産や授乳の経験がない女性は、乳がんになるリスクが高まると言われている。たしかに、東京などの都市圏は、地方に比べると女性の初婚年齢が高く、出生率も低い。わが家も子どもは、娘ひとり。田舎に帰省すると、近所のご家庭のお子さんは、ほぼ3人以上が当たり前。乳がんに罹患していなければ、もうひとりくらい産めたかも、と妄想を膨らませる筆者にしてみれば、なんともうらやましい限りである。要するに、住んでいる地域のライフスタイルや生活環境もがんのリスクと関係があるということだ。※1:公益財団法人がん研究振興財団「がんの統計'16」 ※2:国立がん研究センター がん情報サービス「がんの統計」

▼注目!乳がんの「10年相対生存率」が発表された

乳がんがかかりやすく、治りやすいがんであることは、生存率にもよく表れている。昨年2016年1月、国立がん研究センターでは「10年相対生存率」を発表した。「相対生存率」というのは、実測生存率を調整し、対象となる病気(この場合はがん)以外で死亡したケースを除外したもの。

あるがんと診断された人のうち5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している人の割合に比べて、どのくらい低いかで表す。100%に近いほど、いわば、がん治療で生命が救える可能性が高いがんとなる。

これまで「5年相対生存率」は公表されていたが、同様の規模で10年バージョンが公表されたのは初めて。筆者も含め、その結果に多くのがん患者が注目したことだろう。