「カツ丼」と「天丼」の違いを考えられるか

ここで具体的に考えてみましょう。ある日、ランチで「カツ丼」と「天丼」で悩んだとします。そのときはカツ丼を選んで「失敗した」と思った。さて、みなさんは翌日の昼食で、どのように意思決定をしますか。

「昨日はカツ丼で失敗したから、今日は天丼にしよう」と考えるでしょうか。それとも「なぜ昨日はカツ丼をまずいと思ったのか」と、自分の嗜好を掘り下げるでしょうか。

商売のセンスがない経営者は、前者のように「カツ丼がダメなら天丼」という「具体の横滑り」をします。「青いフリースが売れないけれど、隣の店では赤いフリースが売れているから、今度は赤を仕入れてみよう」というように、横の具体へ飛ぶことで問題解決を図ろうとするのです。こうした経営者は、キョロキョロと周囲を見渡しては、目まぐるしく経営方針を変えていくため、いつまで経っても原理原則を確立できず、無限にぶれ続けることになります。

一方、優れた経営者は問題に直面したとき、次のように考えます。

「カツ丼をまずいと感じたのは、カツが玉子でとじられ、ご飯と一体化していたからかもしれない。自分はトッピングとご飯がきちんと分かれている天丼のほうが好きなのではないか」

冗談のように思うかもしれませんが、ここで重要なのは「なぜ」という問いを立ててから、別の策を試みているかどうかなのです。

優れた経営者は問題に直面したとき、「横の具体に飛ぶ」のではなく「具体を抽象化する」ことで、自分の原理原則を磨き上げ、そこで培った原理原則を別の具体に適応していくのです。そして、柳井さんのような経営者は、この具体→抽象→具体という往復運動を、あたかも呼吸をするかのようにごく自然に繰り返しています。だから問題解決の手法はその都度違うようにみえても、その背後にある原理原則は決してぶれることがないため、掘り下げていくといつも同じ答えになるわけです。