節制のかけらもない「手つなぎ&パジャマ写真」

プラトニックラブの語源になった古代ギリシャの哲学者、プラトンは、「われわれを支配し導く2つの種類の力」があると述べている。その1つが「快楽への欲望」であり、もう1つが「分別の心」である(『パイドロス』)。

さらに、プラトンは「分別の心がわれわれを理性の声によって最善のもののほうへと導いて、勝利を得るときには、この勝利に『節制』という名が与えられ、これに対して、欲望がわれわれを盲目的に快楽のほうへと惹きよせて、われわれの中において支配権を握るときは、この支配に『放縦』という名が与えられている」と説明している(同書)。

新幹線車内の写真も、パジャマ姿の今井氏の写真も、「分別」よりも「欲望」が勝ち、「節制」のかけらもなくなって、「放縦」をさらけ出した姿のように誰の目にも映るはずだ。だからこそ、2)稚拙な言い訳にしか聞こえず、腹立たしく感じる人が少なくないのだろう。

策を弄するとかえって世間の怒りに火をつける

こういう人の中には、「そんな子供だましの言い訳が通用するのなら、世の中の不倫はすべて不倫ではなくなる!」「その程度の言い訳で国民を納得させられると思っているのか!国民をなめるな!」と怒っている人も相当いるのではないか。

かつて、不倫がばれたときに「一夜をともにしたが、男女関係はなかった」と釈明した政治家がいたが、それと同様の稚拙な印象を「一線は越えていない」という釈明は与える。

もちろん、この2人が一晩中一緒に過ごしたホテルやマンションの部屋で何をしていたのかを確認することも、撮影することもできない。それを見越したうえで「一線は越えていない」と強調したのなら、なかなかの策士だが、「策士策に溺れる」という言葉があるように、策を弄すると、かえって世間の怒りに火をつけることもありうる。このことを、政治家であれば、忘れてはならない。