シンクロナイズドスイミングの選手として21年間活動し、引退してから13年経ちます。現役時代と引退後とでは食事のスタイルがガラッと変わりました。現役時代はハードな練習によって1日で体重が2~3キロも減るので、食事は「失われた分を補完する」という意味合いが強く、たくさん食べるのに必死でした。「食べた」と脳が認識するとお腹がいっぱいになるので、食事しながら「まだ食べてない、食べてない」と自分に言い聞かせながら、ひたすら料理を口に運んでいました。

シンクロスイマー、オリンピック銀メダリスト
武田 美保

京都府生まれ。アトランタ・シドニー・アテネの3度の五輪で合計5つのメダルを獲得。引退後はテレビ番組への出演、講演、本の執筆など活動の場を広げ、2013年より、文部科学省「教育再生実行会議」の有識者メンバーも務めている。三重県知事の鈴木英敬氏の妻、2児の母親でもある。
 

引退後は量が減り、ゆっくり料理を味わうことができるようになりました。ただ、偏った食事をすると、脳が自動的に1日の中でカロリーや栄養バランスの帳尻を合わせようとするんです。例えば昼に丼ものなど炭水化物が多めのものを食べると、夜はたくさんの野菜が無性に食べたくなるという感じで。このへんはアスリートの習性が残っているんですね。

結婚後は夫が三重2区から衆議院議員総選挙に出馬するため、東京から三重に移住。県内の桑名市にあるはまぐり料理専門店「日の出」に、夫に連れていってもらったときは感動しました。そもそも私は貝が特別好きというわけではなかったのですが、ここにきて概念が変わりました。はまぐりのお鍋が本当においしいんです。大ぶりのはまぐりはジューシーで、噛むと旨味が口の中に広がり、いくつでも食べたくなる味。また、はまぐりを1つ、2つと鍋に入れるたびに、はまぐりから出る出汁で旨味が増し、味が濃厚に変わるのがわかるんです。焼きはまぐりは味がギュッと凝縮されてさらに濃くなった感じ。そしてコースの最後に出るおじやがすごい。旨味のエキスが全部のお米に染み込んで、まさに至福の味です。

麻布十番にある「川上庵」は、三重に移住する前に友人とよく行っていた、お蕎麦がおいしいお店です。関西出身なので基本、うどん派なのですが、初めてこちらでお蕎麦をいただいたとき、その香りと喉越しのよさに、本来のお蕎麦の味というものがようやくわかりました。お蕎麦以外にも居酒屋並みにメニューが豊富で、特に信州牛のレンコン巻きが好きでした。信州牛は脂っこくなく、柔らかくてジューシー。太めのレンコンも歯ごたえがあっておいしいんです。お店の雰囲気もおしゃれなバーのようで、友人と落ち着いて話ができるのがうれしい。東京で仕事があるときに寄りたいお店です。