年収が高くとも、「老後破綻」の危険が

とはいえ、金持ち県民でも油断は厳禁。日銀の川村氏は、「老後破綻、下流老人化は年収が低い人だけの問題ではない」と注意を呼びかける。

「金融リテラシー調査では、50代でも6割以上は老後資金の資金計画を策定していない、住宅ローンを借りている人の3人に1人は定年退職後も支払いを継続している等の課題が明らかになりました。ライフプランを十分考えずに過大な住宅投資を行い、老後資金の確保で苦労する人が多い。『ライフプランの下で、お金の管理や運用を考える』という基本をもっと重視したほうがいい」(川村氏)

自分は金持ち県民だからという過信も命取りだ。経済コラムニストの大江氏は過去13年間、企業のサラリーマン40万人を相手に確定拠出年金を勧めるセミナーを行ってきた。そこで痛感したのは日本人の「自立意識の欠如」だ。

「日本人は国や会社がなんとかしてくれると思っている。そこが危ない。セミナーを開いて知識を詰め込んでも、聞いてくるのは結局『何が一番儲かるか教えて』ですから(苦笑)」(大江氏)

ならばどうするか。大江氏が勧めるのは「知識より、実践」だ。もらえる年金額を日本年金機構のHPなどでおおよそ試算する。家計簿は妻任せにせず自分でつける。たったこれだけの手間で「老後足りない金額」が判明する。

「はやりの積立投資も確定拠出年金も、少額で始めて、上がった下がったと一喜一憂してみる。実践しないと身に付きません。水泳の本を100冊読んでも、水に入らなかったら泳げるようにならない。それと同じです」(大江氏)

金融リテラシーの底上げは、脱貧乏県民の必要条件。だが知識があっても自ら活かそうとしなくては宝の持ち腐れに。「誰かが何とかしてくれるだろう」という他者依存からの脱却が、一流県民入りのカギと言えそうだ。

(写真左から)日本銀行 金融知識普及グループ長 川村憲章/ナンバーワン戦略研究所所長 矢野新一/経済コラムニスト オフィス・リベルタス代表取締役 大江英樹
 
(撮影=和田佳久、山口典利 写真=AFLO、PIXTA 名古屋弁校正=川脇哲也)
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