最も金融知識がないのは山梨県

ほかにも心配な県がある。正誤問題正答率で最下位につけたのは山梨県。「金融トラブルの経験者の割合」でも全国ワーストであり、「お金に弱い県」の烙印を押された格好だ。しかし山梨といえば甲州商人、むしろお金にはうるさいのでは? と矢野氏に聞くと、「無尽」の影響を指摘した。月1回程度集まり食事やゴルフをするグループのことで、金銭の互助組織を兼ねる。山梨では「無尽」に入っていないと選挙にも当選しないとも言われている。沖縄にせよ、山梨にせよ、“相互助け合い”の精神が根付いている県で「金融リテラシー」が低いとは皮肉な話である。

正誤問題正答率で下から3番目に低いのは山形県。米沢藩の時代には「日本一の貧乏藩」との誹りを受けるも、その後、名君の呼び声高い上杉鷹山の藩政改革により、清貧をよしとする県民性が根付いた。そのおかげか、損をするくらいなら投資をしない「損失回避傾向」は全国トップ。こうしたお金に関して冒険しない気質が金融知識の低さに結びついたと推測できる。

「山形は東北のなかでも一番お金にシビアなところ。1年間の収入に対する預貯金の割合が、全国13位。共働き率も全国1位。お金を殖やす意識は低くても、しっかり『貯め込んでいる』ということです」(矢野氏)

まじめに働くのはいいが、低金利時代に“貯めこむだけ”では非常に心配である。

一方、同じ東北でも秋田は、「老後の生活費について資金計画を立てている人の割合」が全国で最下位。そもそも秋田は「着倒れ、食い倒れ」と言われるほど享楽的な県民性。江戸時代に海運によって栄え、石高も高かったことから、着物など贅沢な品を持つことができたのだ。年金破綻が心配されている昨今、贅沢と遊びを優先させてしまう秋田県民は、東北きっての“先行き不安県民”といえるかもしれない。

正誤問題正答率42位と残念な結果に終わった鳥取県は、目先のお金に飛びつく「近視眼的行動バイアス」が強い。「すぐもらえる10万円と1年後の11万円だったら、どっちを選ぶか」の問いに対して、10万円を選んだ人が全国で一番多かったのだ。鳥取県は、消極的で地味な因幡(東部)と、商人気質の強い伯耆(西部)とで県民性が二分される。今回は因幡の気質が全面に出た結果と言えそうだ。

大阪は正誤問題正答率で38位。ケチでがめつい印象の“なにわ商人”が金融知識に欠けるとは意外だ。しかし、そこは大阪、「金融知識に自信を持っている人の割合」は14位とかなり高い。「自信過剰傾向」ランキングでは堂々の7位に。新しいものに敏感な半面、「せっかち」で目先重視の発想が強く、長期的な展望に欠ける商人気質が災いしたのかもしれない。