駅前商店街が生まれ変わる画期的な方法

駅前商店街の活性化にしても、運営主体が振興組合である限り、どんなにいいアイデアが出てきても実現するのは難しい。振興組合を株式会社化して、意思決定できるようにすることが先決だ。株式会社化したうえで何を意思決定するか。商店街の運営はイオンやセブン&アイ・ホールディングスのような大資本に委託すべきだと私は考える。今さら個人商店が寄り合っても、集客力は取り戻せない。仕入れ能力やマーケティング能力、テナントを呼び込む力のある大資本に運営を任せるのが現実的だ。駅前商店街といえば大体は一等地にある。郊外でのアウトレットモール事業を続ける大資本にとっても、駅前モールの運営は新たな優良事業だろう。株式会社化した振興組合なら手を組みやすい。合弁会社をつくって株式を発行して、組合の会員はそれぞれが株を持つ。株の配当で安定した収入を得てもいいし、提携相手に一株いくらで買い取ってもらってもいい。

商店街は複層階のモールに建て替える。駅前商店街には不足がちな駐車場も地下にガッチリ造る。商店街は2階建てで、空中権(未利用の容積率分)が余っているところが多い。これを有効活用しない手はない。下層階は商店街のテナントや居住用に使って、上層階は分譲や賃貸用の収益物件にするのだ。ホテルを導入してもいいし、民泊物件としてAirbnbに登録してもいい。駅前に便利な宿泊施設があれば集客効果も高い。商店街を抜けて駅から歩いて15分とか20分のところに住んでいる人たちを呼び寄せるのも一案だ。「○○地区の皆さんは、現在、お住まいの土地と等価交換で6階の物件を優先的に分譲します」などとアナウンスして、一つの地区の住民をフロア単位で集める。寂れたシャッター商店街を抜けて駅から15分もかかった自宅と、駅近に建て替えられたモール上層階の最新物件が等価交換なら悪い話ではない。住民の合意を得てまとまって移住できる地区を優先して呼び込む。空いた土地はそれこそインバウンドの観光客が大型バスで大挙してやってくるようなショッピングモールとして再開発してもいい。

株式会社化すれば、これぐらいの事業プランは次々に湧いて出てくる。そうした事業戦略に対して金融機関がお金を貸してくれたり、投資が集まったりする。うまくいけば商店街KK(株式会社)として上場することも十分に可能だ。組合を株式会社化することは、日本の再起動に欠かせない仕掛けだと私は思っている。すでに農業協同組合(農協)は農協法の改正で、株式会社に移行することが可能になった。農協の株式会社化は日本の農業にとって非常にアップサイドがある。マンションの管理組合や商店街の振興組合の株式会社化はさらにアップサイドが大きい。日本中、信じられないような建設ブームが起こって、2020年問題も乗り越えられるはずだ。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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