競合営業マンの中から「相談相手」に選んでもらえるか

どのようにしたら、この困難なコンペに勝ち残ることができるだろうか。

私たちは「競合を意識したアプローチをすることで突破口が開けるのではないか」という仮説を立てた。それはこういうことだ。

見積書を依頼する段階では、どのようなスペックの商品やサービスを購入したいかを顧客側はすでに決定済みだ。売り込む側は、それに沿った提案をするしかない。提案内容が同じなら、結局、差別化のポイントは価格だけ、ということにならざるをえない。

だが、そのときに思い切った低価格を提示しても仕事がとれるとは限らないし、もしとれても、利益を削ったうえでの受注なら会社のためにならない。不毛な価格競争に陥らないためには、そこに至る前にまったく別方面からアプローチすることが必要だろう。

そこで注目したいのが、「顧客は何をもとにスペックを決定するのか」ということだ。その道に通じたよほどのプロでもない限り、購買担当者といえども、専門的な判断を求められるスペック決定を自分ひとりでやることはない。必ず誰かに相談する。その「誰か」は多くの場合、最も親密な営業マンだ。

日本市場ではハイレベルの商品・サービスを提供する世界的企業がしのぎを削っている。その中で「他社には絶対真似できない特別な機能」「切り札的なプラン」を打ち出そうとしても不可能に近い。つまり最終段階での一発逆転は難しい。そうである以上、事前に顧客からの「相談」をもちかけられる企業(営業マン)が非常に有利であるのは間違いない。

相談相手になれれば、スペックだけではなく、導入時期やおおよその費用についても顧客と情報を共有することになる。そのためコンペ以前に受注を半ば確実にすることができる。いまの時代、営業マンが目指すべきなのは、競合をかきわけて「顧客の相談相手になる」ということなのだ。

そのために必要なのが、競合の動きを知ることである。たとえばこういうことだ。景気の冷え込みを受けて「月1回のアプローチを月2回に増やしてお客様との関係を強化しよう!」と営業マンに発破をかける会社があるが、これはナンセンスだ。なぜなら、競合の営業マンが半年に1回しか顔を出していなければ、月1回でも顧客にとっては十分に価値がある。となると、訪問回数を増やす代わりに提案内容を工夫するといった対応をすればいい。

有効な対策を打つには、競合によるアプローチの頻度や提案の切り口、提供している情報の質と量といった情報が必要になる。それを踏まえて、顧客にとっての自社や自分の位置づけを知るのである。