時差出勤は働き方改革の第一歩

最大の世論調査ともいえる東京都議選の結果が出ました。ご承知のように、都民ファーストの会は、いきなり第1党に躍進。公認候補者50名中49名が当選し、追加公認6名と合わせて55名の大所帯です。公明党なども合わせると全部で79議席。全127議席の過半数を超える望外の結果となり、目指すべき東京大改革を前に進める環境が整ったと感じています。

開票日翌日の7月3日、私は都民ファーストの会の代表を退きました。今回の選挙結果は私の想像を上回る「圧勝」です。心より嬉しく感じると同時に、行きすぎはよくないと考え、代表を辞任。かねて都知事が地域政党の代表を務めることで、二元代表制のチェック機能が弱まるのではという懸念の声もありました。法的には問題ないとはいえ、今後、不要なエネルギーを消費するより、知事として必要な都政推進に集中するほうが、有権者の期待に応えられるのではないか。開票結果を見届けた後、一晩頭を冷やして出した結論です。

もっとも、都民ファーストの会の多くは、私が新しい都政を築くために創設した政治塾「希望の塾」出身です。東京大改革という志を同じくしながらも、弁護士や、公認会計士、医師、税理士など各分野のプロフェッショナルが集まりました。様々な知見や問題意識が集結し、議会に新しい風を吹かせてくれるでしょう。

さて、新しいメンバーとともに迎える初めての夏です。東京都では7月11日から25日までの2週間を「時差BIZ」期間と定めました。参加表明をしてくれた11の鉄道会社や約260社の企業を中心に、時差出勤やテレワークを推進します。早朝出勤した社員にはドリンクを提供したり、鉄道会社のポイントを付与したり、様々な試みが行われています。

都民ファーストの会が掲げた377の公約の中でも、「働き方改革」は重要な柱の1つです。「快適通勤」、そして「在宅勤務を可能にするテレワーク」の実現に今回は力を注ぎました。

東京都心部にかけての通勤ラッシュは、今や日本を代表する光景として世界でも有名です。それも不名誉な意味においてです。立錐の余地もない通勤列車に、さらに体をねじ込ませる人々。それを、さらに後ろから押し込む「押し屋」の存在……。非効率的、非人間的な労働環境を象徴するものとして、「KAROSHI(過労死)」とともに世界から奇異の目で見られているのです。

国土交通省では、電車の混雑率を段階別に定義しています。椅子に座るか吊革につかまれる定員乗車の状況が混雑率100%ですが、電車が揺れるたびに体が斜めになって身動きができず、手も動かせない混雑率250%に近い状況も珍しくなく、オフィスにたどり着くだけで体力の大半を消耗してしまう。社会全体の生産性の問題にもかかわります。

環境大臣時代、私は「クールビズ」を提唱し、夏場の企業や官公庁において服装の軽装化を目指しました。今回の「時差BIZ」は、いわばその第2弾。

高温多湿な日本の夏にスーツとネクタイで身を固め、反対にオフィスは冷房でキンキンに冷やす。そんなかつての状況は、地球温暖化対策に反する以上に、なにより快適ではありません。それでも社会通念上、我慢するしかないと思い込んできた人々の意識も、社会全体で取り組んだ結果、大きく変わりました。同様に、満員電車は仕方ないというコンセンサスも、工夫次第で十分に変えることができるのではないでしょうか。