ビリオネア名言録【2】
私の仕事はクーポンに金額を書き込むことだ

バフェット氏は、企業価値の算定について聞かれると、企業を債券にたとえて話をする。

債券の価値は、毎年受け取るクーポン(利札)、つまり利息で決まる。期間10年の債券であれば、向こう10年分の利息を合計して一定の金利で現在価値に割り引けばいい。

額面1万円の債券に500円のクーポン(年利5%の利息)が付き、投資家が毎年500円の現金収入を得るとしよう。

現在の500円と将来の500円は価値が異なる。年利5%で運用すれば現在の500円は1年後に525円、2年後に551円になる。

逆に言えば、1年後の500円は5%の金利で割り引かなければならず、その場合の現在価値は476円(500円を1.05で割った数字)になる。2年後の500円は453円(476円を1.05で割った数字)だ。同様にして満期を迎える10年後のクーポンまで現在価値に割り引くと、債券の価値を確定できるわけだ。

企業の場合、クーポンに相当するのが、事業が創出する現金収入を意味する「キャッシュフロー」である。ただし、クーポンと違い、キャッシュフローには金額が書き込まれていない。キャッシュフローの金額を見積もるには事業に対する深い理解と洞察力が欠かせない。バフェット氏は「私の仕事はクーポンに金額を書き込むこと」と言っている。

幸い、コカ・コーラのような企業は事業構造が単純で、しかも強力な「堀」に守られており、将来の「クーポン」を予測することが比較的容易だ。バフェット氏は「証券取引所が5年、10年と閉鎖されても気にしない」と公言する。もちろん誇張して言っているのだが、冗談を言っているわけでもない。「クーポン」を予測できるような企業に投資し、そのような企業は同氏にとって「永久保有銘柄」となる。つまり、永遠に売買する必要がないのだ。

しかし、「永久保有銘柄」の経営が大幅に悪化したらどうするのか。私はこの質問をバフェット氏に直接ぶつけたことがあるが、「そもそも、経営が大幅に悪化するような企業には投資しません」という答えが返ってきた。