「日本の米は世界一」「カモン諭吉」「私を二郎に連れてって」……。歌詞はコミカルだが、サウンドは豪快。そんな「生活密着型ラウドロック」というジャンルを突き進むバンド「打首獄門同好会」。今年5月には「持ち歌にラブソングが一曲もないアーティスト」としてテレビに取り上げられた。その不思議な魅力とは――。

ラブソングが一曲もないアーティスト

2017年5月21日、テレビ番組「さまぁ~ずの神ギ問」(フジテレビ系)で、「持ち歌にラブソングが一曲もないアーティストっているの?」という疑問に対し、1位になったのが「打首獄門同好会」(以下、打首)というバンドだ。番組によると、「アルバムを1枚以上出しているアーティストの中で、ラブソングを歌っていないのは75組。その中で一番楽曲を出していたのは打首の71曲」だった。

打首獄門同好会の「会長」で、作詞作曲を手掛けるギターの大澤敦史氏。

何とも、おどろおどろしいバンド名だが、ギター、ベース、ドラムの3人構成で織りなすサウンドは、重厚で多彩。しかも、歌詞の対象は、お米やラーメン、漬物といった食品から、花粉症や虫歯、薄毛など日常生活の一端まで、ゆるくて楽しいものばかりだ。

そのなかにラブソングがあってもよさそうなものだが、作詞作曲を手掛けるギターの大澤敦史は、こう語る。

「天邪鬼な性格なので、フツーの枠にはまりたくないんでしょうね。若者をターゲットにして思春期に響くワードを探ると、フツーは恋愛に関わる言葉になってくる。分かるんだけど、僕はやってても面白くないなって」

リスナーにこびるのではなく、あくまでも純粋に自身が楽しめるものを見つけて、市場に楽曲を提供するという姿勢なのだ。曲作りのヒントは、大澤自身がその時々で引っ掛かった事柄だという。たとえば「私を二郎に連れてって」は、カルト的な人気があるラーメン店「ラーメン二郎」が、大澤のマイブームになったことがきっかけだった。

加えて、大澤が何度も口にしていたのは、「自然体」という言葉だ。

「僕は何に対しても基本的に“自然体”というのがあります。ムリしても長く続かない。素のままの方が長続きするんです」

肩肘を張らず、自分に素直に。そして自らが楽しむことをモットーに音楽に向き合う。10代に目覚めた“音楽少年”の気持ちそのままに、今も音楽に取り組んでいるのだ。そして、打首の特徴は、3人というシンプルな構成でありながら、3人全員がボーカルを担当しているところだ。しかも、ドラムの河本あす香、ベースのjunkoは女性である。