こう言われたら、相手も簡単に否定はできません。そもそも、ビジネスにおいて、提案にゴーサインを出すときの、決定的な決断材料は2つしかないと言われています。1つは自分よりも権力を持っている人間がいいと認めた場合。もう1つは大多数の人間がいいと認めた場合です。

ワーディングによって、相手がゴーサインを出しやすい判断材料を提示することは、部下にとって必須のスキルと言えるでしょう。

成績が伸び悩む部下には「ピア・プレッシャー」

次に紹介するのは、成績が伸び悩む部下に対して、あえてハードな目標を提示するときに使える心理術。その名も「ピア・プレッシャー」と言います。

ピア・プレッシャーとは、仲間や同僚からの心理的な圧力を意味します。日本の企業にありがちな付き合い残業もピア・プレッシャーの一種。「みんながそうしている(働いている)のだから……」という圧力に、知らず知らず従わされているわけです。

ロミオ・ロドリゲス Jr.『気づかれずに主導権をにぎる技術』(サンクチュアリ出版)

具体的な活用法を述べましょう。たとえば、1か月で6、7件の契約をとれればOKという商品を扱う営業部があるとします。部下に、何とか月10件の契約をとらせたいという場合、次のようにピア・プレッシャーをかけてみましょう。

「他部署の話だが、先月は15件の契約をとった人間が何人もいる。君にも、ぜひ同程度の契約をとってきてほしい。ただ、いきなり言われてもハードルは高いだろう。そこで最低でも10件。どうだ、それほど難しい話じゃないだろ」

このように、他の人間ができているんだから、あなたもできるよね、と圧力をかけるのです。ポイントとしては「まわりができているから」と言って同調を促すこと。そして、最初にあえて目標を高めに設定しておいて、そこから本来の数字にまで落とすこと。この2点を意識することで、強力な圧力をかけつつも、こちらが譲歩までしたように見せることができます。

「ウソの本音」をエサに部下の本音を知る

部下に対する心理術をもう1つ続けます。あなたが上司という立場にいるなら、部下が本音では何を考えているのか知りたい、と思うのではないでしょうか。

この解決策は、じつはシンプル。そもそも、相手の本音を引き出すには、自分自身が本音を言えばいいのです。人間は自分に対してすべてを正直に話してくれる人を信用する傾向にあり、信頼を置くようになるからです。

こう言うと、その「自身が本音を言う」ことが難しいんだと思う方もいるでしょう。しかし、そこでバカ正直に本音を言う必要はありません。あくまで、「本音に見える」ように話せばいい。