日本人のバケーションは貧しすぎる

日本人が家族旅行をする日数の平均が年間で2日になったという統計を最近、目にした。それまで1.5日とか1.8日だった家族旅行の日数がようやく2日を超えたというのだ。家族で過ごすバケーションが年間1日か2日などというのは欧米ではありえない。

たとえばアメリカでは夏休みは6月から9月中旬までの好きなときに取れる。アメリカ人は平均的に1週間単位で休暇を取って家族でバケーションに出かける。大型のバンやトレーラーハウスを借りて、国内を回ったり、カナダに足を延ばしてプリンス・エドワード島(赤毛のアンの島)を訪ねたりする。フリーウェイに乗るより国道や州道をトコトコ行くのが人気で、家族でそういう旅行をしてアメリカという国を知る。同じように旅行している家族とオートキャンプ場で出会って一晩一緒に過ごしたり、新しい人と仲良くなって情報をやり取りしたりすることも多い。

フィンランド辺りなら夏休みは1カ月くらい家族で森に行く。別荘というには若干お粗末に見えるバンガローやログハウスを自分たちで建てて、そこで一夏を過ごすのだ。成長に合わせて子供用のログハウスを隣に造ったりもする。森を散策したり、川で釣りをしたり、湖に舟を浮かべたり。夜は家族で満天の星空を眺める。フィンランド人の自然への親しみ方は半端ではないし、家族の絆というのも非常に強い。日本のように夏休みに登校日を設定して子供を学校に呼び戻そうものなら、家族が怒り出すだろう。

ヨーロッパでは国外に家を借りて長期休暇を過ごすのも一般的だ。たとえばドイツ人の部課長クラスのビジネスマンであれば、イタリア辺りの一軒家を1カ月単位で借りて家族で過ごすパターンが多い。その家に住んでいるイタリア人はどこに行ったかと言えば、より安いスペインなどに家を借りてバケーションを楽しむ。家を貸したスペイン人はポルトガルとかモロッコに遊びに行くという具合で、ヨーロッパでは夏冬の長期バケーションは民族大移動が起きる。

地中海屈指の美しさを誇るクロアチアの海岸線を見て回ると一番多いのはイギリス人の別荘だ。イギリス人は国外の別荘に目敏くて、クロアチアが独立して共産圏を脱すると、イギリス人があっという間に別荘を買い占めた。金曜日の夕方にポルトガルの漁港やゴルフ場のあるところに別荘を購入して週末を家族で楽しんで月曜日の朝に戻ってくるイギリス人ビジネスマンも珍しくない。当然引退したら、そちらに移住してしまう。個人ベースのブレグジットだ。

香港、台湾、シンガポールなどの中華圏もバケーションがヨーロッパ化していて、長期休暇を海外で楽しんでいる人が多い。中国には年間2500万円以上バケーションに使う富裕層が約100万家族いるという。多いときには20人以上で家族旅行をする彼らの一番人気の旅行先はタイのスーパーリゾートだ。タイのサムイ島にあるフォーシーズンズやシックスセンシズといった超高級ホテルは素泊まりだけで1泊十数万円するが、いつもヨーロッパ人と中国人で賑わっている。