2016年夏にリリースし爆発的にヒットしたポケモンGO。ゲームディレクターを務めた野村さんが、サンフランシスコで取材に応じてくれた。

思いついたらすぐ形にするのが野村流

野村達雄●Niantic, Inc. 「ポケモンGO」ゲームディレクター。1986年、中国・黒竜江省生まれ。2011年、東京工業大学大学院修了後、米グーグルに入社。グーグルマップのエンジニアを務めた後、15年、Niantic, Inc.に移籍。

僕は中国で生まれて、9歳の時に日本にやってきました。最初は日本語を話せず、貧しい生活でしたが、どんどん友達が増え、生活が良くなっていきました。そんな中でポケモンに出合って、小学生の頃は、ポケモンマスターを目指すサトシに自らを投影して遊びました。ほかにもドラクエなど、いろいろなゲームにハマっていましたね。中学生の頃は新聞配達のバイトをして、パソコンやゲームを手に入れました。そして、ゲームの仕組みを知りたくなってコンピュータの世界に進んだのです。

僕はプログラミングが好きなので、「こんなものがあったらいいな」というアイデアを思いついたら、できるだけ手を動かして作ってみることにしています。完成度は低くても形にして人に見せる。そうすればフィードバックがもらえ、そこからブラッシュアップしていけるんです。

3年前、僕がグーグルの社員だった頃、エイプリルフールの企画で「ポケモンチャレンジ」を手掛けたときもそうでした。グーグルマップにポケモンが出てきたらみんなびっくりするだろうと思い、プロトタイプをつくったところ、社内で大きな反響がありました。それがきっかけで、Niantic,Inc.(独立前の当時はNiantic Labs)に誘われ、「ポケモン GO」のゲームディレクターとして開発に携わることになったのです。2016年の夏にリリースして、今では世界150以上の国と地域で、7.5億回以上もダウンロードされています。

僕は人を驚かせたり、ジョークを言ったりするのが大好きで、世に新しいものを発案する面白さが僕の原動力になっています。

思いついたらすぐに形にしてみるとはいえ、発案から実際にプロダクト化するまでには多くのエネルギーが必要です。職場から歩いて10分のところに住むなど、仕事に集中できるように、環境を整えています。

またサンフランシスコでは、ミートアップをはじめ、さまざまなイベントがあります。魅力的なのですが、今は目の前の仕事に集中し、よそ見はしないようにしています。

あまり詳しいことは言えないのですが(笑)、2017年中には新たな「ポケモン GO」のアップデートがあるので、ご期待ください。

構成、撮影=Ayako Jacobsson