睡眠不足が続いて睡眠負債がふくらむと、その先にあるのは仕事のパフォーマンス低下、そして体調の悪化。睡眠を削って頑張っても、得るものが「不幸」では意味がない。『人生が劇的に変わる睡眠法』(プレジデント社)の著者である白濱龍太郎先生は、良質の睡眠を手に入れることこそ、幸せへの近道だという。その方法のひとつは、自分の24時間を棚卸して睡眠時間をつくることだった。そして、ふたつめは……。

午後の眠気は避けられない

――聞きたいことがあったのですが、最近、昼食後に強い眠気に襲われるようになったのも睡眠負債が原因ですか?

【白濱】それもひとつでしょうが、人は一定のリズムを保って生活していると、1日に2度、眠気のピークが訪れます。最大のピークは午前2~4時。最も眠りが深くなる時間帯です。まさに、草木も眠る丑三つ時。そして2回目のピークは、午後2~4時。

『人生が劇的に変わる睡眠法』(白濱龍太郎著・プレジデント社刊)

――その時間はよく眠くなります。

【白濱】この時間帯は、昼食後のホルモンバランスと生体リズムという避けがたい生理現象が眠気になっています。

――避けがたい生理現象だったんですね。

【白濱】人を覚醒させるオレキシンというホルモンの働きが、食事を摂って血糖値が上がると抑えられます。そのため、昼食後には眠くなるというわけです。一方で、空腹状態であればオレキシンの分泌が増加します。あまりの忙しさで昼食を食べられなかったとき、妙に頭が冴えて仕事がはかどるというのは、そういう理由です。眠くなったらどうしているんですか?

――栄養ドリンクやコーヒーでなんとか凌いでいます。

【白濱】どちらも目が覚める飲み物ですね。海外では、エナジードリンクも人気ですね。ただ、栄養ドリンクやエナジードリンクの場合は、短期間で大量に飲むと、悪心、嘔吐、震え、神経過敏、せん妄、けいれん発作、心拍異常、気分の変調、下痢、血圧上昇、腎障害など数多くの副作用が生じる恐れも懸念されています。

――そんなに副作用が?

【白濱】あくまでも短期間で大量に飲んだ場合です。

――栄養ドリンクは、目を覚ます切り札だと思っていました。

【白濱】栄養ドリンクを否定するわけではありませんが、ほどほどに使うのが最も効果的だと思います。カフェインなんかよりも簡単に眠気を抑える方法があります。目には目を、歯には歯を。眠気には昼寝です。

――えっ、昼寝ですか? うーん、仕事中に昼寝というのは……。

【白濱】やはり、さぼっていると思われますか?

――いやあ、どこの職場でもそうでしょう。昼寝ができる時間があるというだけでもうれしいですけどね。

【白濱】昼寝はただの休息時間ではありませんよ。午後3時以前の短い昼寝は肉体的なストレスをやわらげて、気持ちを落ち着かせます。そのため、夜はスムーズに寝つくことができるといわれています。また、フランスのソルボンヌ大学の研究によれば、短い昼寝でストレスは低下し、免疫系が活性化するといわれています。

――昼寝にはそういう効果もあるんですか。

【白濱】まだあります。一晩の睡眠不足によるホルモンへの影響は、30分ほどの昼寝で解消できます。