嫌々なった部長だが大きなものを得ることに

02年に異動した健康事業開発部は、トップダウンでつくられた組織。さまざまな部門から7人が集められた。

「転職したくらいのインパクト。まず医薬やゲノム関連の部署から来た人たちの話している言葉がわかりませんでした。助詞しか日本語じゃないみたいで(笑)」

新しい事業部では「健康ビジネスって何をやるの?」とゼロから考え、同社らしくアミノ酸の素材を使ったサプリメントを通販で売る事業を始めることに。

最初の商品は、ぐっすり眠りたい人のための「グリナ(R)」。7人とも通信販売事業の経験がない。誰が売るのかと思っていたら、部長から「お前が売るんだ」と言われ、通販のプラットフォームを立ち上げなければならなくなった。

通販広告は日々、目先を変えていくことが大事になるなど、今までの商習慣が通用しない。社内でも、財務担当者に代金が回収できないことがあるのを理解してもらえないなど苦労があった。

(上)2011年/ダイレクトマーケティング部にて部長に昇格。プレッシャーやストレスで眠れない日も。組織について深く考えた時期(下)2015年/家庭用事業部長、執行役員就任

「11年に黒字化するまで赤字続きでしたから、いくら頑張っても結果が出ない時代が長かったですね。また部長になったときはプレッシャーで眠れず、メンタル面でやばいと思ったこともあります」

なりたくてなった部長でもない。健康事業開発部への異動とともに課長になったときは「嫌だったし悲しかったのを覚えています」。上司の役員昇進に伴い部長に昇進した際は、その上司に「役員と部長を兼任できないですか」とお願いして怒られたことも。

「でも、部長になってみると、メンバーがものすごくいとおしく思えました。こんな気持ちになるなんて、自分でも驚きでした」

通販事業時代に社内外の仲間と志を合わせて仕事をするすばらしさを実感。15年に執行役員になり、部下の数が20人弱から90人にまで増えた。「家庭用事業部は、多様な経験を持つ人がいる組織。各人が持てる力を存分に発揮する“しなやかで強い組織”を目指し舵取りしていきたいです」

▼役員の素顔に迫るQ&A

Q. 好きなことば
ケ・セラ・セラ

Q. ストレス発散
登山

Q. 趣味
チェロ

Q. 愛読書
向田邦子、須賀敦子

撮影=澁谷高晴