メインルートはしばらく固定。「東日本の旬」で各地を巡る

TRAIN SUITE 四季島は、上野駅の専用ラウンジ「PROLOGUE四季島」で乗客を迎えたのち、この列車のために新設された、TRAIN SUITE 四季島専用のプラットホーム「新たな旅立ちの13.5番線ホーム」から出発する。すべて上野発上野行きで、春~秋に2つ、冬に1つの定番コースを用意する。

TRAIN SUITE 四季島の乗客は、まず上野駅の専用のラウンジに集まり、ここから13.5番線ホームに出て列車に乗り込む。このために上野駅に作られた専用のホームだ。

春~秋の3泊4日コースは北海道に上陸する旅。まず日光に立ち寄り、車中泊で青函トンネルを潜って函館を観光、登別またはニセコで宿泊する。翌日に本州に戻り、青森県で観光。三内丸山遺跡またはリゾートしらかみ貸切運行のどちらかを選択できる。車中泊で早朝の山形県日本海側へ。3コースの観光メニューを選び、新潟を観光して上野に戻る。

日本三大車窓として知られる姥捨駅。ここからの夜景は本当に美しい。

春~秋の1泊2日コースはワインコンシェルジュが同行する。中央本線で西へ。山梨でワインをテーマとした観光。スイッチバック駅の姥捨駅(長野県)に作られた専用ラウンジから、日本三大車窓と呼ばれる美しい景色を鑑賞。車中泊で翌朝は会津で郷土料理の朝食、会津漆器の店に立ち寄って上野に戻る。

冬の2泊3日コースは雪国の冬を楽しむもの。白石、松島を観光して車中泊、翌日は青森観光で、津軽鉄道ストーブ列車の旅、または弘前を観光する。その後、南下して一ノ関を観光して車中泊、3日目は鳴子温泉郷を観光して戻る。

これら定番コースの他に、季節ごとの特別コースを1回ずつ用意する。夏は秋田県の西馬音内盆踊りと鳴子温泉を巡る2泊3日、大晦日から元日にかけて、熱海で観光、横須賀で年越しのカウントダウンののち、車中泊で千葉県の和田浦で初日の出を拝み、鹿島神宮で初詣を行うという1泊2日。春は3月、酒田の雛巡り、SL銀河貸切乗車、結城紬を訪ねる2泊3日だ。

TRAIN SUITE 四季島のコースはどのように決まったのだろうか。

「JR東日本が経験してきた観光スポットを挙げて、点を選びます。その点を結んで経路を作ります。走行中の景色に配慮して、夜行区間と昼行区間を選択していきます」

鶴岡市の加茂水族館。クラゲで有名になる前にはお客が集まらず、閉館の危機にあった。 鶴岡市の加茂水族館。クラゲで有名になる前にはお客が集まらず、閉館の危機にあった。

なかでも印象的な「点」は山形県鶴岡市立加茂水族館だ。今でこそクラゲドリーム館として有名だが、その前は不振が続き、閉館の危機だった。館長がクラゲを研究しており、いっそクラゲ専門にしてしまえ、とリニューアルした。

それを2014年の山形ディスティネーションキャンペーン(JRグループが年4回実施する旅行キャンペーン)で強力にプッシュしたところ、有名になり、集客も増えて大成功となった。その縁がTRAIN SUITE 四季島に結び、なんと、朝の5時に特別に開館してくれることになった。公立の施設にもかかわらずだ。市長の後押しもあったという。

JR東日本は、東北各地でこうした連携を重ねていた。もうひとつ例を挙げる。青森県の五能線だ。もっとも人気のあるローカル線としても知られている。TRAIN SUITE 四季島も入線したかったけれど、10両編成の乗り入れはできず、観光列車「リゾートしらかみ」最新編成をチャーターする。リゾートしらかみの前身は「ノスタルジックビュートレイン」というトロッコ列車だった。しかし、当時、集客は思わしくなかった。

そこで、リゾートしらかみへリニューアルするにあたって、地域の人々と停車駅や観光コースを組み立てて連携した。かつて、降りた列車が戻ってきて、もう一度乗れるという「蜃気楼ダイヤ」があった。これも地域連携の賜物。こうした連携の数々がTRAIN SUITE 四季島の「点」選びに役立った。

観光地という「点」をつないでダイヤを組み立てる

ひとつひとつの点を決めて、つなぐ経路を、食事や睡眠の時間などを考慮してダイヤを組み立てる。こうして作り上げた定番3コースは、当面は変更しない方針だ。加茂水族館のように特別な配慮を受けた場所が多く、その縁を大切にするためだという。

ただし、臨時コース「東日本の旬」は積極的に進める考え。夏は盆踊り、冬は初日の出など、ピンポイントなコースで、乗客と地域の要望に応えていきたい。また、沿線の自然や催し物に合わせて、観光ルートの変更も柔軟に対応する。たとえば運行初日だった5月1日出発コースでは、五稜郭でさくらが満開だと判明。急遽、五稜郭へ立ち寄った。

相馬楼の舞妓(まいこ)

電気区間もディーゼル区間も、どこでも走れる新車両

「E001系」も、多様なコース設計に都合がいい。電車と気動車の両方の性能を備えた「EDC」方式を初採用。保安装置も4タイプ搭載した。これで在来線のほとんどの線路に入線できる。折り返し運行も容易で、機関車を前後に付け替える作業が不要。上野駅の到着と出発もスムーズだし、スイッチバック方式の姨捨駅に立ち寄れる。

TRAIN SUITE 四季島のために、E001系という新しい車両を開発した。電気区間もディーゼル区間もどちらも走れる。
車内は客室を広くとるため、通路を片側に寄せている。

車内は客室を広く取るため、通路を片側に寄せている。そこで、なるべく客室側の車窓に配慮した経路を設定する。これも入線できる線路が多く、折り返し自在の車両だからできることだ。EDC方式の採用は、JR東日本のフラッグシップトレインとして最新の技術にチャレンジするという目的だった。それが結果的にコース設計に貢献した。

■次のページでは、JR東日本「TRAIN SUITE 四季島」の企画書を掲載します。