このようにマイナンバーの適用である程度不正受給の抑止が進むとみられますが、本来は適切な保護の拡大にも制度を活用するべきでしょう。

マイナンバー制度の導入をめぐる議論は、民主党政権下の2011年に始まったものです。当時の議論のポイントは「給付付き税額控除」でした。これは課税所得が一定以上の人には税額控除を行い、課税所得が少ない低所得者には現金を給付するという仕組みです。

日本の社会保障制度は「申請主義」で、申請しなければ保障を受けられません。しかし社会的弱者の多くは、様々な制度の存在すら知らないのが現状です。マイナンバーで所得や資産が把握できるようになれば、「生活に不安はありませんか」と申請を呼びかけることもできます。

政府は「不正受給の抑止」をアピールしていますが、それは統治側の論理。付番される側のメリットを示さなければ、マイナンバー制度への信頼は得られず、個人番号カードの利用も広がらないでしょう。

(構成=須藤 輝)
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