大腸がん

現在、国が集団がん検診として推奨しているのは、大腸がん(便潜血検査)・肺がん(胸部X線検査)・子宮頸がん(細胞診)・乳がん(乳房X線検査=マンモグラフィ)・胃がん(胃X線検査・内視鏡検査)の5つ。

便潜血法による大腸がん検診は、「簡単、安価、死亡率低下の直接的証拠があり、利益が不利益を上回る」優等生だ。世界の評価も一致している。とりあえず集団検診を受けてほしい。

便潜血検査の次の「二次検査」に相当するS状結腸鏡検査や大腸内視鏡検査も、死亡率を下げる十分な根拠がある。見逃し率が低く、まったく異常がなかった場合は5~10年後の再検診でいいのも大きな利点だ。

その一方、出血や腸管に孔があくなどの偶発症が報告されており、検診として広く行った場合の不利益は必ずしも小さいとはいえない。大腸内視鏡検査を受ける際は、偶発症の可能性を踏まえ、緊急時の対応ができる施設を選ぶといい。

肺がん

肺がんの胸部X線検査はどうだろう。この検査は、早期がんの見逃しリスクが高いとされる。

死亡減少効果は、レントゲン写真を読み取る2人以上の医師(そのうち1人は十分な経験があること)がダブルチェックを行い、過去の写真と比較することをはじめ、精度管理が十分行われている条件で初めて期待できる。しかし現実の検診現場では、医師によるダブルチェック実施率は低いとされる。国では今後、他のがん検診とともに検診体制の精度管理を強化する考えで、自治体や施設の体制が問われるだろう。

一方、将来の検診候補として被曝量を抑えた低線量CTが注目されている。元喫煙者約5万人を対象とした「全米肺がん検診臨床試験」では、胸部X線検査と比較し、死亡率を約2割下げた。

これを受け、USPSTFは、死亡率の低下という利益が過剰診断・被曝という不利益を確実に上回る「肺がん高リスク集団」に限定した形で、低線量CT検診を推奨とした。

高リスク集団とは、タバコを1日1箱30年間吸い続けたのと同じ程度の喫煙歴があり(1日2箱なら15年間)、喫煙中もしくは禁煙後15年以内の55~80歳の成人を指す。任意の肺がん検診を選択する際の参考にするといいだろう。