特徴1:自ら考えて行動する~恋愛禁止は、自分の判断に任せると“認識”する

彼女は総選挙後に、今回の件に関して記者会見を開いている。その発言はネットでも読むことができる。興味深い発言をいくつか拾ってみたい。

まずはAKBグループの「恋愛禁止」というオキテについて。エンターテインメント的な要素として、このグループにとって恋愛禁止という約束事は重要である。それを破ることによってペナルティーを課されるメンバーもいる、とされている。これを読んでいる皆さんの会社でも、明文化されていないけれども、厳然と存在するルール、いわゆる暗黙の了解がある、というところは少なくないだろう。彼女は、会見で「恋愛禁止は頭にありましたか?」と問われて、次のように答えている。

「私の個人的な意見は(AKBの)恋愛は自分の判断に任せるものと認識していました」(日刊スポーツ、6月22日 https://www.nikkansports.com/entertainment/akb48/news/1843946.html

「恋愛禁止」という言葉には、当然、「自分の判断に任せる」という意味は含まれていない。「明文化されていないことは、自分の判断に任せるということだ」と、勝手に“認識”することにより、判断は自分でしていい、と行動に移したのかもしれない。

会社での出来事に例えれば、上司や先輩に指導されたが、その指導に疑問を持ち、指導自体が明文化されていないから、自らで判断すると“認識”し、別の行動をとってしまった、という感じだろうか。もちろん、上司や先輩の指導が絶対的に正しいとは限らない。なので、疑問を持つこと自体は別に悪いことではない。自分の判断に任せると勝手に“認識してしまっている”ところに、この話の難しさがある。

今の若者、特に優秀な人材の多くは「自ら考えて行動することが大事である」と、ずっと教え込まれて育っている。「他人に言われてから行動するようではダメだ、もっと自分の意志を持て」と。ということは、彼女のような行動をするタイプが採用面接にやってきたとしたら、かなり魅力的に見えるはずだ。「扱いづらい」と判断する採用担当者もいるかもしれないが、「個性がある」、さらにいうと「意志が強いタイプ」と評価される場合もあるのだ。

けれども、仕事での指示を「私の個人的な意見ですが、自分の判断に任せるものと認識」され、自らの意思だけで判断されると、組織としては困ってしまうのは、当然だろう。さらに興味深いのは、この短いセリフの中に「私」「個人的な」「自分の」と、3度も自分について触れている点である。まさに、この騒動における中心は「私」であり「個人」であり「自分」なのだ。

特徴2:天動説~すべては自らの思いが優先される

「アイドルの恋愛論について世間の賛否両論は知っていますか」という質問に対し、彼女は以下のように答えている。

「私の意見ですか?(略)好きになる気持ちが分からなかった時は、ものすごくグループのことに一生懸命になってたら、恋愛する暇はないと思ってた。でも人を好きになって思ったのは、恋愛禁止ってルールで我慢できる恋愛は、恋愛じゃないんじゃないかなって思ってしまいました」(日刊スポーツ、6月22日)

この発言はまさに、若手社員によくある天動説的世界観、「思いがすべて症候群」だ(勝手に名付けました)。ルールがあっても、自らの思いがそれを上回れば、逸脱してもいい。世界は自分を中心に回っているので、誰かが作ったルール(ここでは「恋愛禁止」)を、自分で書き換えて(=我慢できない恋愛は本当の恋愛なのだからしてもいい)、運用して正当化する、という思考である。

会社に置き換えてみよう。自分の思いがすべてにおいて優先されるために、その思いにふさわしくない仕組みやルール、組織における暗黙の了解などは、思いとの整合性を取るために書き換えられたり、認識が改められたり、場合によっては「なかったこと」になる。上司や先輩がいくら指導をしても、世界の中心である若手によって解釈が改められてしまう。そのため、のれんに腕押し状態になってしまうのだ。

「あー、こういう若手いる!」と、思い当たる人事担当者は多いと思う。しかしこれにしても、「自分で考えられる若手であり、多少組織をはみ出してはいるが、切り開く力がある」と見られるケースもある。事実、そういう若手が活躍し、世間の注目を集める場面も多い。