「経営者と知的労働者にとっての唯一のツールは情報である」──。そう言ったのは、世界的な経営学者、ピーター F. ドラッカーだ。確かに、あらゆるビジネスパーソンにとって情報収集は欠かせない。今の時代は、ほぼリアルタイムで更新されるニュースなど、鮮度の高い情報に手軽にアクセスできる環境も整っている。

ただ、得た情報を“知識化、知恵化する”ということを考えたとき、日々のニュースのようなフロー型の情報ばかりでなく、より密度と深さを備え、多様なノウハウなどが凝縮したストック型の情報も、しっかりと押さえておきたいところだ。

読書は、そんなストック型の情報を得るのに最も有効な手段といっていいだろう。しかし、ビジネスパーソンは優秀であればあるほど忙しい……。そこで重宝するのがAmazonの「Audible(オーディブル)」である。Audibleは、すでに世界で何百万もの人が利用する音声コンテンツのサービス。スマホなどのアプリを通じて、いつでも、どこでも自由にオーディオブックを聴くことができる。

ラインアップされているコンテンツは、ビジネスや自己啓発から語学、名作文学、現代文学、落語までさまざま。月額1500円の定額で聴き放題だ。今回は、そんなAudibleのユーザー3人の事例を通じて、本を “聴く”ことのメリットを紹介しよう。

読んだことのある本を聴き直したら、ぐっと理解が深まった
【A氏(30代前半・営業部門所属)】

通勤で電車に乗っている時間は、片道正味40分弱です。ただ、自宅から会社までドア・トゥー・ドアでかかる時間は、1時間10分くらい。自宅から駅まで歩く時間や、乗り換えの時間が結構かかっているんです。Audibleがいいのは、その1時間10分の間ずっと聴いていられることですね。普通の本や雑誌だと、こうはいきません。20~30分で中断されてしまい、「もうちょっと読みたいのに」ということも結構多い……。会社の行き帰りに、1時間以上まとまった時間、本を楽しめるのは大きいですね。

いろいろなコンテンツを聴いている中で、印象に残っているものの一つが『7つの習慣 プライベートコーチ』。単行本の『7つの習慣』はずいぶん前に読んでいたんですが、中身はだいぶ忘れてしまっていました。今回、『7つの習慣 プライベートコーチ』をAudibleであらためて聴くと、記憶が蘇ってきて、内容がとてもよく理解できたんです。それから、「一度読んだ本を、聴き直すのもありだな」と思い、かつて読んだ新書など、ほかのコンテンツでも実践しています。

一方で、Audibleでは「新着セレクション」やカテゴリーごとの「週間ランキング」も紹介されるので、新しい本と出会うこともできます。これまであまり読んだことのなかった「リーダー論」に関する本を続けて何冊か読んでみたりしました。自身の視野を広げてくれるのは、本の何よりの効用。Audibleのおかげでその手段が増え、うれしく思っています。

●私のおすすめタイトル
『7つの習慣 プライベートコーチ』(フランクリン・コヴィー・ジャパン)
『はじめてのリーダー論 ―部下と上手につきあう31のコツ』(小倉 広)
『Steve Jobs SPEECHES 人生を変えるスティーブ・ジョブズ スピーチ ~人生の教訓はすべてここにある~』(国際文化研究室)

アプリの機能を便利に使い、すき間時間に英語を勉強
【B氏(30代後半・調達部門所属)】

仕事柄、海外のグループ会社と直接やりとりする機会が少なくありません。語学のスキルをもっと高めたいと思うんですが、平日はなかなか時間が取れず、スクールに通ったりすることも難しい。そこで、すき間時間に効率的に外国語のスキルをアップするツールとして、Audibleを試してみました。

世界で何百万人も使っているアプリというだけあって、使い勝手はとてもいいですね。まず、再生速度を0.5倍から3.0倍まで変更できるのがやっぱり便利(※)。普段は0.8倍くらいにして、英語学習のコンテンツを聴いています。また、気になるフレーズがあったらすぐにブックマークできる。これも助かります。その部分を、後から何度でも聴き返せますから。

定期的に聴いているのは、月刊の『ENGLISH JOURNAL』。単なる英語のセンテンスだけではなく、海外の文化人のインタビューや著名な経済学者の対談なども収録されていて、コンテンツそのものが面白いんです。テニスプレーヤーの錦織圭君や映画監督のウディ・アレンの話は、ちょっとした雑学にもなります。そのほか、『留学しないで「英語の頭」をつくる方法』など語学関連の本は充実しています。せっかく聴き放題なので、これからはビジネスや自己啓発の本もどんどん楽しみたいですね。

※再生速度の変更可能な範囲は、端末により異なります(iOS: 0.75~3倍速/Android: 0.5~3倍/Windows 10: 0.25~4倍)。また、端末により細かい調整ができないものがあります。

●私のおすすめタイトル
『ENGLISH JOURNAL』(アルク)
『留学しないで「英語の頭」をつくる方法』(齋藤 兼司)
『アドラー流 人をHappyにする話し方』(岩井 俊憲)

お風呂で、ベッドで好きな小説を堪能しています
【C氏(40代後半・経営企画部門所属)】

オンタイムのすき間時間に利用するのもAudibleの上手な使い方だと思いますが、私の場合は自宅でのリラックスタイムに利用することが多いですね。実際に使ってみてありがたいなと思うのは、まさに“耳で聴く”ことができる点です。どうしても昼間はPCと向き合ったり、書類に目を通したり、目から大量の情報が入ってくる。自宅では、なるべく目を休めたいですから。

コンテンツの種類としては、仕事に関わるようなビジネスものも聴きますが、どちらかというと小説などの割合が高いです。夏目漱石、芥川龍之介、森鴎外といった名作はしっかり揃っているし、時代小説やミステリーも抱負にラインアップされているので、その時々の気分で楽しんでいます。プロのナレーターさんや俳優さんが朗読しているので、臨場感があってとても聴きやすい。これも、Audibleを気に入っている点です。

家では、防水のスマートフォンで湯船に浸かりながら聴くことが多いです。あとは就寝前。スリープタイマーも付いているんで安心です。それに週末、近所の河川敷をジョギングしながら、というのも実は楽しみの一つです。この前、初めて「落語」を試してみました。のんびりと走りながら聴くには、ちょうど良かった。ちょっとはまりそうな気がしています(笑)。

●私のおすすめタイトル
『羅生門』(芥川龍之介)
『人斬り以蔵』(司馬遼太郎)
『三遊亭圓楽「芝浜」』(五代目三遊亭圓楽)