インド第2位のIT企業インフォシスが日本での事業拡大に乗り出しています。2020年までに日本での売上高を2倍以上に成長させる計画です。事業拡大のため新たに日本代表となった大西俊介氏は、直近までNTTデータの子会社で社長を務めていました。国内最大手からインド企業へ。転進の背景を聞きました――。

もう「オフショア会社」ではない

――日本での知名度は高いとはいえない。インフォシスとはどんな企業なのか。

私も「日本代表をやらないか」というオファーをもらうまで、よく知らなかったが、調べてみて自分の不明を恥じた。特に2014年、独SAPのCTOだったビシャル・シッカをCEOとして迎えてから、インフォシスは急速に変わりつつある。

インフォシス日本代表・大西俊介氏

私のイメージは、「オフショア会社」というものだった。つまりインドの人件費の安さから、開発コストを抑えられる点に競争力をもっていると思っていた。しかし、そのイメージはもう古い。たとえばGEとは包括パートナーシップを結んでいて、製造業でのIoT活用の先端を研究している。またゴールドマン・サックスの個人融資事業や電気自動車メーカーの自動運転なども手がけている。技術開発に熱心で、世界のIT業界でリーダー的なポジションにある。

――なぜ日本代表のオファーを受けたのか。

インフォシスの売上高は全世界で約1兆1495億円(2016年度)。特に米英などの英語圏で強いのだが、日本での規模はその200分の1程度にとどまっている。いま日本のIT投資にはフォローの風が吹いている。セールスの部隊を整え、インフォシスの技術力をきちんとアピールできれば、2020年までに売上高を2倍以上に伸ばすことは十分に可能だ。またジョイントベンチャーやM&Aといった選択肢をとれば、3倍以上にすることもできるはずだ。インフォシスにはそのポテンシャルがある。

本社は大学のような雰囲気

――日本代表就任にあたり、インドの本社を訪ねたと聞いた。どんな印象を受けたか。

技術力の背景には、充実した教育環境があることを実感した。本社は南部のバンガロールにある。バンガロールには、インド理科大学院(Indian Institute of Science)など、世界レベルの大学が多数ある。インフォシスで働く社員も、そうした大学の出身者が多く、社屋も大学のような雰囲気があった。

南部バンガロールにあるインフォシス本社の様子

私は2012年から2013年にかけて、デロイト トーマツコンサルティングで、企業の戦略立案とオペレーションを行うインダストリーグループに所属し、パートナーという立場で働いていた。デロイトはキャリア採用に積極的で、アグレッシブに事業を展開してきた会社だ。一方、インフォシスは着実な研究開発を重ね、新卒から一貫した人材教育に強みがある。外資系といっても、まったく雰囲気が違うことに驚いた。